Still Life Imaging -素晴らしき物撮影の世界-
第14回

ブランド広告を想定して香水瓶を撮る

格好良い、美しい、面白い物撮影の世界をビジュアルとプロセスで紹介する連載。ライティングテクニックや見せ方のアイデアなど、ビジュアル提案を行なうためのテクニックを凸版印刷TICビジュアルクリエイティブ部 チーフフォトグラファーの南雲暁彦氏が解説します。

本記事では、ブランド広告を想定とした香水瓶の撮影をご紹介します。

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Still Life Imaging スタジオ撮影の極意

<完成作品>

3.2s f16 ISO200
撮影協力:中島孟世(THS)
スタイリング:鈴木俊哉(BOOK.INC)
ロゴデザイン:井元友香(凸版印刷)
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“今回はガラスのボトルを直線的な光でライティング。透過光で作りの凝った香水瓶の表情を抽出し、魅力を引き出した。”

ガラスのボトルというのは、つるんとした何の造形のないものでも直線的な強い光を透過させると、思いもよらない不思議な表情を影とともに映し出すことがある。作りの凝った香水瓶だとなおさらのことで、そういう意味でも驚くようなポテンシャルを持っている。そのボトルに潜んだ魅力を引き出そうというのが今回の撮影である。

そう、主要被写体はボトルそのものではなくその「影」である。一言に「影」と言っても複雑な造形を持つ液体の入った透明なボトルが相手となると思いもよらない反射や煌めきが発生し、光や色の成分が幾重にも折り重る。手法としては透過光でボトルの表情を抽出するということになるのだが、それをできるだけシャープに、内に秘めた個性をしっかりと映し出すように直線的な光でライティングを行ない、見るものを惹きつけるビジュアルを創っていく。

ライティング図

【使用機材】
カメラ&レンズ(Canon)
EOS R…[1]
RF24-105mm F4 L IS USM…[2]

ライト(DEDOLIGHT〈KPI取扱製品〉)
DLED4.1-BI…[3]

 

撮影の流れ

今回のビジュアルをどのように撮影するのか順を追って説明していく。ライティング図と合わせて見ていこう。

1. 被写体のセレクトとセッティング

今回の撮影では強い光を当ててみるまでボトルのポテンシャルが見えてこないので、何か持っていそうなキャラの濃いボトルを沢山用意し、スタジオでオーディションを行なった。影が重ならないようにびっしりと並べて影を比べていくのだが、そのモノ自体を並べて見ているよりもボディを透過した光が映し出す姿は何か赤裸々な個性を感じさせ、「実は凄いやつじゃん」とか、「意外と大したことないね」といった変な感想がスタッフの中で沸き起こる。

今回用意した全てのボトル

オーディションを勝ち残ったものたちは反射の表情や色、フォルムを加味され丁寧に配置されていく。キャラを素直に出すために水平基調で並べることにした。

色やフォルムのバランスを見ながら配置していく

2. ライティング


今回のライティングは基本的に影を作るためのライティングであり、ビジュアルとして拘るところはフォルムを必要以上に崩さない様にひたすらにまっすぐでシャープな影を作ることだ。直線的で強い光を遠い位置から、というのは撮影設計の時点で想像していたがLEDのスポットライトをもってしても、結局被写体からの距離7m、高さ2.4mの位置になった。

距離7m、高さ2.4mの位置から照射

これだけ離れていて、しかもスポットライトなので少し動かしただけでもすぐに光の芯が逃げてしまう。それを慎重に調整して、影の角度や長さを決めていく。

スポットライトを慎重に調整

3. ライト位置による影の出方の違い

基本的に被写体にライトが近づけば下の写真のように放射状に影ができていく。今回のライティングで一番気にしたのはなるべく真っ直ぐ並行な影を作ることだったので、被写体とライトはかなりの距離が必要だった。このように複数のものを並べて並行な影を一発撮りで作っていくのは意外と大変だ。また、影を短くしたい場合はライトの高さを上げていく必要があるので今回の作品のようなビジュアルを目指すのであれば、それなりに大きなスタジオで撮影する必要がある。

LEDを照射した場合 被写体から約1mの位置から照射した場合

4. 光源による影脚の違い

光源による影の出方を知りたかったのでHMIとタングステンのスポットライトも用意して比較してみた。

HMIを照射した場合

タングステンを照射した場合

結果はご覧の通り、両方ともLEDのようなシャープさは出ず、特にボトルの頭の影の部分がわかりやすいがLED>タングステン>HMIの順で影が柔らかくなっていった。

LED

タングステン

HMI

タングステンは今後姿を消していく光源なので、あまり選択肢に入ってこないとは思うが、LEDはどんどん進化していくので、近い将来もっとシャープに出るものや逆にソフトにできる物も出てくるだろう。

左から順にLED、HMI、タングステン

 

Tips

DLED4.1-BI
DEDOLIGHT「DLED4.1-BI」は光量と色温度の調整機能に加え、照射角度のコントロールができる。照射角度は4°まで集光でき、かなり強力で直線的なスポット光が作り出すことができるため、数あるLEDのなかでも貴重な存在だ。また非球面レンズを使用しているため均一的な光を照射するので、光のムラを気にすることなくライティングすることができる。

DWP 800
broncolor「DWP 800」は全天候型で雨天時でも使えるHMI。リフレクターや多彩なフレネルレンズがオプションで装着できるため、フラッドからスポットまで豊富なライティングのバリエーションが可能だ。

キヤノン EOS R
EOS Rのバリアングルモニターは液晶の可動域が広いため、ファインダーや背面液晶が覗きにくい俯瞰撮影の際にとても役立つ。今回は内蔵のWi-Fi機能を使いEOS UtilityでPCにワイヤレス転送することで、ケーブルの煩わしさもなく撮影できた。ブツ撮りであればそれほどストレスを感じない転送速度だったし、長時間PC上でライブビュー映像を表示していてもカメラ側が熱をもって動かなくなることもなかった。EOS Utilityのライブビュー映像は非常に自然な見え方をするので、積極的に使用している。

バリエーション

セットやライティングを活かして別パターンの撮影。アレンジアイデアのひとつとしてチェックしておこう。

5s f16 ISO100  ※画像をクリックすると別ウィンドウで拡大表示

メインカットではわかりやすく個性豊かな優等生的香水瓶に登場してもらったが、バリエーションカットはつるんとしたボトルの割には影に面白い表情を持つアウトローを選んだ。

実際に寄せ集めとでもいうようなチームで、茶色の角瓶はマダガスカルで買ったテキーラ、水色はマデイラ島で買った百円均一の空瓶、六角のボトル2本は我が家ハンドメイドのハーバリウム。黄色と緑はジョージアで買った薬草入りの地酒というラインナップ。しかしながらメインカットよりチームワーク感は上、まとまったビジュアルにすることが出来た。これは影をメインビジュアルにしたからだろう、本質的には統一感があるということか。

メインカットは大理石をバックに敷いて少し背景にも表情を持たせたが、ここでは白ケント紙を使用してスパッと影を浮き立たせ、レイアウトを強調するシンプルなイメージに仕上げた。

 

Still Life Imaging スタジオ撮影の極意

コマーシャル・フォト 2019年11月号

著者プロフィール

南雲暁彦

(なぐも・あきひこ)
1970年神奈川県生まれ。幼少期をブラジル・サンパウロで育つ。日本大学芸術学部写真学科卒業。凸版印刷(株)TICビジュアルクリエイティブ部 チーフフォトグラファー。「匠」エキスパートクリエイター。コマーシャルフォトを中心に映像制作、執筆、セミナー講師なども行う。海外ロケを得意とし、世界300以上の都市で撮影実績を持つ。APA広告年鑑、全国カタログ・ポスター展グランプリなど国内外で受賞歴多数。APA会員。知的財産管理技能士。長岡造形大学非常勤講師。

著書「Still Life Imaging スタジオ撮影の極意」2019年10月28日発売

様々な広告撮影の現場で活躍するフォトグラファー南雲暁彦氏が、月刊コマーシャル・フォトにて連載していた、ブツ撮りテクニック企画「Still Life Imaging -素晴らしき物撮影の世界-」をまとめたものです。

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