被写体としての「空」は、誰もが見上げればいつでも目にすることができ、その時々で様々な表情を見せてくれる、身近で手軽な存在です。しかし誰が撮っても「それなり」の絵になる一方で、写真映像作品として「それなり以上」を目指すのであれば、技術を磨き、機材を整えるだけでは足りず、さらにひと工夫もふた工夫も必要になる奥深さがあるジャンルでもあります。
「四季の空 撮り方レシピブック」では、日本の四季に見られる気象現象を中心として、「空」にまつわる様々な作例と、撮り方のコツを解説しています。また、機材選びやカメラ設定についても言及しており、様々な条件がありうる気象撮影における勘所を掴むのにも役立つ一冊となっています。
本記事では「四季の空を撮る・秋の空」の章より、「月と惑星」の作例を抜粋して紹介します。
月と惑星
月と惑星が接近することが時々あり、空がにぎやかになる。そのようすを撮影するには、月の明るさや星の並びを前もって知っておく必要がある。
中秋の名月と月光に照らされる海
海の向こうから月と惑星が昇ってきた。月の明かりで海が輝く。ソフトフィルターを装着して月と金星、火星、木星を撮影した。
月の通り道と惑星の通り道は近く、また、月は毎日12度ほど東にその位置を変えていくため、1カ月の間に何度も、月とさまざまな惑星は接近する。特に明るい金星や木星との接近は、肉眼でもよくわかる。また、約2年ごとに地球へ近づく赤みを帯びた火星とのランデブーもおもしろい。満月に近い明るい月と惑星が並ぶと、月の光が強すぎる印象を受けるが、三日月などの細い月と惑星が並ぶと、他の星々もよく見えてとても美しい。朝方や夕方の空に並ぶ姿も神秘的だ。
朝方の空に並ぶ月と金星、火星、木星
夜明けの薄明がはじまると、空には濃い青色が広がった。少しずつ明るくなっていく中で、月や惑星の輝きが徐々に弱まっていく。
月の光に対して惑星の輝きはとても弱い。露出は惑星に合わせることになるが、満月に近い明るい月の場合は、自身の光によって明るく広がって写る。月の姿をはっきりと写すためには、三日月などの細い月を狙おう。朝方か夕方のほんのりと明るい空で撮影すると雰囲気もでる。夜間の撮影では、月明かりによって浮かび上がる周囲の風景や、地平線を入れると構図が安定する。惑星や周囲の星々を際立たせるには、ソフトフィルターを使うといいが月はさらに明るく大きく写る。
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