四季の空 撮り方レシピブック
第5回

赤く輝く「雄大積雲」と、雲底から伸びる「水上竜巻」。撮るなら安全確認は忘れずに

被写体としての「空」は、誰もが見上げればいつでも目にすることができ、その時々で様々な表情を見せてくれる、身近で手軽な存在です。しかし誰が撮っても「それなり」の絵になる一方で、写真映像作品として「それなり以上」を目指すのであれば、技術を磨き、機材を整えるだけでは足りず、さらにひと工夫もふた工夫も必要になる奥深さがあるジャンルでもあります。

四季の空 撮り方レシピブック」では、日本の四季に見られる気象現象を中心として、「空」にまつわる様々な作例と、撮り方のコツを解説しています。また、機材選びやカメラ設定についても言及しており、様々な条件がありうる気象撮影における勘所を掴むのにも役立つ一冊となっています。

本記事では「四季の空を撮る・秋の空」の章より、「雄大積雲と水上竜巻」の作例を抜粋して紹介します。

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四季の空 撮り方レシピブック

雄大積雲と水上竜巻

秋の日本海の水はまだ温かいため、大陸から冷たい空気が入り込むと雄大積雲などが発生しやすい。場合によっては水上竜巻が現れることも。

雲から垂れ下がる水上竜巻
雄大積雲から漏斗雲が垂れ下がり、海面に接すると水上竜巻になる。雲の移動に取り残されて、伸びた形になった。

新潟県村上市 9月 16時42分 富士フイルム X-T2 XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR 600mm F5.6 1/750秒 ISO200 中央部重点測光 -0.3EV  WB晴れ

秋の日本海に大陸から冷たい空気がやってくると、海の水はまだ温かいため、その温度差で大きな積雲(雄大積雲)などが発生する。雲の成長はとても早く、強い上昇気流を伴うので、風の渦が発生して海面に向かって漏斗雲が現れることがある。その雲が海面に接すると水上竜巻が発生する。北西の季節風に雲が流されるため、竜巻の形は曲がり短時間で消滅する。台風接近時などの巨大積乱雲による内陸の竜巻よりも勢力は弱いので、被害が発生することはあまりない。

雄大積雲の夕焼け
雄大積雲が発達して夕日に染まった。その成長は早く、上昇気流も激しかったため雲の底から漏斗雲が下りてきた。雲の背は高く日没後も赤く輝いた。

新潟県村上市 9月 17時27分 富士フイルム X-T2 XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR 247mm F8 1/85秒 ISO200 中央部重点測光 0 EV  WB晴れ

秋の日本海で、急に大きく発達する雲があったら要注意だ。雲に近づくのは危険で、突風や急な雨、そして雷にも注意しよう。水上竜巻は遠方にあって、かつこちらに向かっていないことがわかった場合のみ、撮影することができる。最初の作例では水上竜巻は遠方にあり、かつ右側に動いていることを確認した上で撮影した。大きな雲が存在しないと竜巻は発生しない。夕方には雄大積雲が夕焼けで赤く染まる光景も見られるが、その時間は限られている。


四季の空 撮り方レシピブック

*本記事に掲載している写真の著作権は著者が所有いたします。写真の無断使用や転載を禁止いたします。

著者プロフィール

武田康男


空の冒険写真家(R)
1960年東京生まれ、千葉県育ち。
東北大学理学部卒業後、高校教諭、第50次南極観測越冬隊員を経て、
大学や市民講座の講師、執筆、撮影、番組制作、出演などを行っている。
気象予報士。日本気象学会会員、日本自然科学写真協会会員など。
【著書】
空の探検記
楽しい気象観察図鑑
虹の図鑑
雲の名前、空のふしぎ
デジタルカメラ昼と夜撮影術」など
http://www.skies.jp/

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