被写体としての「空」は、誰もが見上げればいつでも目にすることができ、その時々で様々な表情を見せてくれる、身近で手軽な存在です。しかし誰が撮っても「それなり」の絵になる一方で、写真映像作品として「それなり以上」を目指すのであれば、技術を磨き、機材を整えるだけでは足りず、さらにひと工夫もふた工夫も必要になる奥深さがあるジャンルでもあります。
「四季の空 撮り方レシピブック」では、日本の四季に見られる気象現象を中心として、「空」にまつわる様々な作例と、撮り方のコツを解説しています。また、機材選びやカメラ設定についても言及しており、様々な条件がありうる気象撮影における勘所を掴むのにも役立つ一冊となっています。
本記事では「四季の空を撮る・春の空」の章より、「洞窟に差し込む日光・月光」の作例を抜粋して紹介します。
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洞窟に差し込む日光・月光
亀岩の洞窟に日光や月光が差し込む時、その光が水面に映りハートの形になることがある。その貴重な瞬間を求めて、多くの人が撮影にやってくる。
洞窟の日光
日の出から1時間ほどすると、洞窟内に太陽の光が入りはじめる。徐々に光の角度は変化していき、水面に映った光とともに、ハートの形に近づいていく。風や水の流れで水面が揺れる日もある。
千葉県君津市、濃溝(のうみぞ)の滝の近くにある亀岩の洞窟は、岩をくり抜いてできた洞窟で、3月と9月のそれぞれ後半あたりに、太陽や月の光が洞窟内に差し込む。太陽光がちょうどよく入ると、水面に映った光とともにハートの形になることから、人気の撮影スポットになっている。日光が差し込むのは、朝の限られた時間帯だ。また、満月前後の月の光でもハートは形作られるが、撮影日が限られる上、周囲には街灯の光もあるため撮影の難易度は上がる。
洞窟の月光
月明かりを撮影する人は少ない。月の光は弱いので、三脚を使用して絞りとシャッター速度を設定しマニュアル露出する。手ブレ防止のため、リモコンやセルフタイマーを利用しよう。
人気の撮影スポットであり、チャンスも限られていることから、多くの撮影者が訪れる。撮影できる場所も限られているので、臨機応変に対応することが求められる。ズームレンズで構図を決めるといいだろう。撮影地は意外と暗く、写真の解像力を高めるために絞って撮影すると、相対的にシャッター速度がかなり遅くなるので、三脚を使うといい。月光で撮影する場合は、月齢を調べておき満月の前後を狙う。月明かりはかなり暗いので、肉眼でははっきり見えないこともある。
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