大村祐里子の身近なものの撮り方辞典
第24回

「落ち葉」が舞い落ちるシチュエーションも作品の一要素

ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
第24回のテーマは「落ち葉」です。

大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。

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身近なものの撮り方辞典

撮影のポイント

1. 想像力を駆使して表現してみよう。
2. デジタルカメラならRAW現像時に彩度をあげる。フィルムカメラの場合は色が強めに出るフィルム銘柄を使う。

Rolleiflex 2.8F Xenotar Kodak Ektar100 f5.6 1/125秒

車のフロントガラスの上に散らばった黄色い葉っぱが美しいと思ったのでシャッターを切りました。落ち葉なのに、写真にすると軽やかに空を舞っているように見えて、その対比が面白いなと感じました。

想像力を生かして作画しよう

落ち葉を撮る時は、「ただ、葉っぱが落ちている」以外に見えるよう工夫すると、面白い仕上がりになることが多いです。葉の色や形だけではなく、葉が落ちているシチュエーションにもこだわってみましょう。たとえば、空が映った車のフロントガラス上に散らばる葉を撮れば、葉が空を舞っているように見えます。また、じっとりと暗い色をした土の上に敷き詰められた鮮やかなモミジを撮れば、まるで深海に生息するヒトデのように見えます。

彩度を強め落ち葉の色を誇張する

葉っぱの色や周りのシチュエーションをやや誇張して見せるには、全体的に写真の彩度を高めに調整するとよいです。デジタルでしたら、現像の時に彩度を少し上げてみればよいでしょうし(上げすぎに注意です)、フィルムでしたら、色が強めに出るフィルムを使うとよいと思います。今回の記事に掲載されている写真はすべてフィルムで撮影しています。私は落ち葉を撮影する時はAgfaやKodakのEktarなど、色が強めに出るフィルムを好んで使用しています。

Rolleiflex 2.8F Xenotar Kodak Ektar100 f5.6 1/60秒

北海道で紅葉を観に行った時の一枚です。寒い場所なので、関東で見かけるよりも、葉の色が濃く鮮やかでした。雨が降った直後の、落ち葉に水滴がついてしっとりとした雰囲気がよいなと思い、その感じを写したいと思いました。

MAMIYA C330 MAMIYA SEKOR 105mm DS F3.5 Kodak Ektar100 f4 1/125秒

池の浅い部分に落ちた黄色い葉を撮影しました。葉が3枚まとまっていて可愛いなと思ったのですが、それだけだと寂しかったので、木漏れ日を多重露光して、落ち葉の周りに青いポワポワとした光が漂っているような一枚に仕上げました。青い光がちょっと霊的な感じで気に入っています。

Rolleiflex 2.8F Xenotar Kodak Ektar100 f8 1/60秒

どんよりした天気の日、じっとりと暗い土の上に散らばったたくさんのモミジが、まるで深海にへばりつくヒトデのように見えたので、あえてそう見えるようにアンダーめにして撮影しました。これを撮る直前に、テレビで深海の番組を観ており、それに影響されました。たまにはそういう撮り方もいいかなと思います。


身近なものの撮り方辞典

著者プロフィール

大村 祐里子


(おおむら・ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。著書「フィルムカメラ・スタートブック」、「身近なものの撮り方辞典100

ウェブサイト:YURIKO OMURA
ブログ:シャッターガール
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