ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
本記事では「硝子」をテーマとして解説します。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. ヒビが入ったり、粉々に散った硝子に「悲壮感」を抱くのはステレオタイプ。先入観なしに向き合ってみよう。
2. 硝子の鋭さを表現するなら、シャープな描写のレンズを選び、絞り開放で撮らない。
割れた硝子の破片の反対側に知人が立っており、その知人が顔をこする姿が破片に映り込んだ瞬間に「良い」と思ったのでシャッターを切りました。人物が分断されているように見えるところが気に入っています。
変化を楽しむ気持ちを忘れずに
硝子はヒビが入ったり、破片となって散らばったり、様々な形に変化します。その形の変化を楽しむのが硝子撮影の醍醐味です。ヒビが入ったり、割れてしまったりしている硝子はどうしても「悲壮感」と結びつきがちですが、そういった先入観を持たずに撮影した方が面白い絵になると思います。「あっ、硝子が割れてる、破片ってきれいだな〜」くらいのテンションで臨みましょう。私も、いつも形の変化を楽しむ気持ちを忘れないようにしています。
散らばるガラスの破片をドラマチックに撮ろう
硝子は割れてバラバラに散らばっているところが最高に美しいと思います。しかし、ただ散らばっているところを撮ってもあまり面白くありません。背後から差し込む光に照らされて白くなっている部分と、光が当たらず黒くなっている部分の差がある場所を狙うと、ドラマチックな絵になりやすいです。また、硝子の鋭利さを表現した方が見る人をドキっとさせることができるので、レンズは絞りを開放にしないで、できるだけシャープに写せるものを使いましょう。
割れて、床一面に散らばった硝子を撮影しました。この時は、硝子そのものではなく、硝子が割れている状況を写したいと思いました。破片を見るとついつい寄ってしまいがちですが、このくらい引いて撮るのも一興です。
粉々に割れた硝子が気になったので近づいて撮ってみました。赤い絨毯と、緑色に光る硝子の対比が美しいと思いました。ファインダーを覗きながら体を上下させて、ガラスがうまく光るポイントを探しました。
何かが当たってヒビ割れたと思われる硝子を撮りました。ヒビの入り方が幾何学模様のようで面白いと感じたので、抽象画のような雰囲気に見えるように構図をつくりました。