初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門
第4回

「ピントの表現」背景の雰囲気を残しつつ被写体を引き立たせる条件とは?

趣味の写真撮影に失敗はつきもの。被写体やシーンをとらえるタイミングはよかったのに、後で写真を見たらきちんと写っていなくてがっくり、という体験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。

写真教室の講師もつとめる写真家・上田晃司さんの著書「初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門」では、写真撮影における「失敗」を「自分の思い通りに撮れていないこと」ととらえ、撮影者が最初に思い浮かべたイメージに近づけるためのテクニックを詳細に解説。露出設定からピント、被写界深度、シャッタースピード、焦点距離、画角といった写真撮影の知識や技術を、図解と作例でわかりやすく説明しており、読み込むことで、撮影初心者にありがちな写真表現上の疑問を解決する一冊に仕上がっています。

本記事は前回に引き続いて、第2章「ピントの表現」より、背景をぼかして被写体を際立たせるテクニックの実践編です。

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初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門

背景の雰囲気を生かして被写体を際立たせる

男性が水辺で電話している姿がかっこよかったので、背景とのバランスを見ながら105mmのレンズを選択しました。また、少し高めの位置から撮影し、男性を画面右下に配置して、ぼけにした背景の空間を生かしています。

フルサイズ・デジタル一眼レフ 焦点距離:105mm 撮影モード:絞り優先オート 絞り:F1.4 シャッタースピード:1/8000秒 ISO感度:100 露出補正:-0.3EV ホワイトバランス:オート

主被写体以外を大きくぼかすには4つの要素が重要

シンプルに主題を際立たせたい場合は、背景を大きくぼかしてみましょう。とは言え、背景を大きくぼかすにはいくつかの要素が必要です。前回紹介した「焦点距離が長いこと」「F値が小さいこと」「被写体に近いこと」「被写体と背景が離れていること」の4つになります。

それでは、作例を見てみましょう。ヴェネチアの水辺で電話を掛けている男性を撮影した写真です。ここで重要になるのは背景と主被写体のバランスです。つまり、街の雰囲気を残しつつ、男性を引き立たせること。撮影には、105mmのレンズを使いました。さらに焦点距離の長い200mmや300mmを使えばもっと大胆にぼかすことはできますが、ここではヴェネチアの風景も生かしたかったので105mmの焦点距離を選んでいます。

次にF値を絞り開放のF1.4に設定しています。F1.4という明るいF値を使うことで、被写体と距離があっても背景を大きくぼかすことができるためです。ぼかす条件として重要な「被写体と背景が離れていること」に関しては十分に距離があるため、きれいにぼかせています。

このような作品を撮影したい方は中望遠から望遠で開放F 値がF1.4~2.0くらいのレンズを選び、絞り開放で撮影して
みましょう。

単焦点レンズがお薦めですが、お持ちでない方は、200mmくらいの望遠ズームレンズを使ってもよいでしょう。望遠になるほど画角が狭くなるので背景の見える範囲は少し狭まりますが、比較的簡単に、背景をぼかすことができます。

撮影のポイント

カメラと紳士との距離は約15m前後
男性と街並のバランスを考えて、被写体から15mほど離れて撮影しています。

縦位置で主被写体を際立たせる
男性を際立たせるのに縦位置でフレーミング。背景をすっきりと見せています。

男性と背景は数キロ離れています
主被写体の男性と背景は離れているため適度にぼけており主被写体がグッと際立っていることが分かります。背景の街が近くに見えるのは望遠レンズによる「圧縮効果」が働いているからです。

こんな撮り方もあり

ベンチがたくさん置いてある場所で、一脚のベンチを際立たせてみました。58mmのレンズを使い絞りF1.4で撮影することで一脚だけ引き立っていることが分かるでしょう。このように背景をぼかすと簡単に主被写体を明確にできます。

フルサイズ・デジタル一眼レフ、焦点距離:105mm、撮影モード:絞り優先オート、絞り:F1.4、シャッタースピード:1/200秒、ISO感度:1100、露出補正:-1.0EV、ホワイトバランス:オート

初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門

著者プロフィール

上田晃司

(うえだ・こうじ)
写真家。広島県呉市出身。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強をしながらテレビ番組、CM 、ショートフィルムなどを制作。現在は雑誌、広告を中心に活動し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影する。ニコンカレッジ、LUMIXフォ卜スクール、Profotoオフィシャルトレーナーなど、年間100回以上の写真教室や講演を行う人気講師でもある。
http://www.koji-ueda.com/

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