人物写真を撮る際に重要なテクニックは数多ありますが、その中でも特に重要度の高い技術は「光を読む力」でしょう。頭の中にあるイメージ通りに作品を撮影するにあたり、光を読む力を鍛えることは、機材選び以上に重要な要素です。
撮影時の光源として使える最も身近な光源機材は内蔵もしくはクリップオンストロボですが、作品づくりを念頭に撮影へ臨むならば、単に直射、バウンスするばかりでなく、ときにはストロボ自体を使わない、あるいは、そこまではせずとも光源の扱いを一工夫する必要も出てくることでしょう。
「光の魔術師イルコのオフカメラ・ストロボライティング」では、カメラから離れた位置にストロボを配置するライティングテクニックを中心に、オフカメラライティングの基礎知識から多灯ライティング、ストロボ撮影時の構図の考え方など、「光を読む」技術を多数紹介しています。
本記事では、Chapter6「ストロボ撮影での構図の考え方」より、被写体に視線を誘導する構図の作り方についての解説を紹介します。
写真撮影の構図法には、さまざなものがあります。三分割法、日の丸構図、額縁構図、黄金分割などなど。あまりルールにこだわる必要もありませんが、ちょっと意識することで、安定感のある画面になります。ここでは、ストロボを使った際に意識したい構図のポイントをまとめました。
光と構図は一緒に考える
光と構図は、切り離しては考えられません。いい光が回る場所を探し、その光がキレイに回るように被写体を配置することは、結局画面全体の構図を考えることでもあるからです。普段から光の方向を意識して、人物にどう光が回るか、イメージを持つようにしましょう。
リーディングラインで視線を誘導する
視線を誘導する構図法の1つに、「リーディングライン」というものがあります。建物や木々のラインなど方向性のある場所に被写体を入れて、自然に被写体に視線が導かれるようにします。リーディングラインを活かすには、たとえばビルとビルの間や道、柱が並んでいる場所、橋などの奥行きのある場所や、カーブや三角形など印象的なラインがある建築物、木々の間など。奥行きのある場所は、手前から奥の1点に線が集中する消失点上に被写体を置きます。
人の目は消失点を意識的に見るので、自然と被写体に視線がいきます。また、曲線が印象的な建物では、弧の延長線上に被写体を配置します。森で撮影するときは、木と人物が重ならないよう、木々の間の抜けた部分に人物を配置するように。空間が抜けている部分はやわらかい光が回っていることが多いので、キレイな光で撮影できます。
柱と柱の間
建築物のライン
木と木の間
ストロボのPOINT
ストロボで光と影のリーディングラインを作る
ストロボを使って影ができることを利用して、リーディングラインを作ることもあります。下の写真は、外から窓に向かってストロボを当て、床に方向性のある窓枠の影を作りました。放射状に広がる影と影の間に人物を入れることで、広がりを感じ、リズム感のある画面にしています。
この写真では、中央から大きく伸びる2本の影の延長線上に、ちょうど橋渡しをするような形で被写体を配置しています。大きな影があるときは、その方向性と「目立つ場所」を観察して、被写体を配置するようにしましょう。この場所でのライティングは、1灯は外からのストロボにブルーのカラーフィルターをつけて窓枠に当て、もう1灯は赤いフィルターをつけてレイヤー4の壁に照射しています。影にも色がついて、鮮やかな画面になります。