人物写真を撮る際に重要なテクニックは数多ありますが、その中でも特に重要度の高い技術は「光を読む力」でしょう。頭の中にあるイメージ通りに作品を撮影するにあたり、光を読む力を鍛えることは、機材選び以上に重要な要素です。
撮影時の光源として使える最も身近な光源機材は内蔵もしくはクリップオンストロボですが、作品づくりを念頭に撮影へ臨むならば、単に直射、バウンスするばかりでなく、ときにはストロボ自体を使わない、あるいは、そこまではせずとも光源の扱いを一工夫する必要も出てくることでしょう。
「光の魔術師イルコのオフカメラ・ストロボライティング」では、カメラから離れた位置にストロボを配置するライティングテクニックを中心に、オフカメラライティングの基礎知識から多灯ライティング、ストロボ撮影時の構図の考え方など、「光を読む」技術を多数紹介しています。
本記事では、Chapter5「実践!オフカメラ・ストロボライティングの作品づくり」より、ストロボ1灯にLED光源1灯を足した長時間露光撮影術についてお伝えします。
背景の壁を照らして華やかな舞台を作る
- 被写体の後ろに自分が隠れて壁を照らす
- 後幕シンクロで被写体をはっきり写す
自分でLEDライトを持って背景を照らす
この写真のポイントは、LEDライトを使って壁を赤くすることです。照らす範囲が狭かったので、このときは3.5秒の露光時間に設定し、私が最初から被写体の後ろに隠れた状態で背後の壁を照らしました。ストロボには赤いフィルターをつけています。30秒とか1分とか、もっと長い露光時間であれば、シャッターを押してから走って行き、1灯だけでなくいろいろな色を当てることもできます。止まると写ってしまうので、ひたすら走り続けます。めっちゃ痩せる撮影です。
長時間露光は後幕シンクロで最後に写し止める
星空や夜のポートレートなど、暗い場所では長時間露光をすることで背景を写し込みます。露光している間は他の自然光が入らないように注意! ポイントは、「後幕シンクロ」に設定すること。後幕シンクロは、シャッター幕が閉じる最後にストロボが光る方法です。通常の先幕シンクロだと、露光時間中に影響し続けるので、モヤモヤした軌跡が写り込んでしまいます。最後にストロボで被写体を写し止めることで、被写体を前面にはっきりと写すことができます。
露光時間を20秒にして、自分で走って小屋を照らしました。中に入って赤いフィルターを付けたストロボを、外壁は青いフィルターを付けたストロボを照らしています。