人物写真を撮る際に重要なテクニックは数多ありますが、その中でも特に重要度の高い技術は「光を読む力」でしょう。頭の中にあるイメージ通りに作品を撮影するにあたり、光を読む力を鍛えることは、機材選び以上に重要な要素です。
撮影時の光源として使える最も身近な光源機材は内蔵もしくはクリップオンストロボですが、作品づくりを念頭に撮影へ臨むならば、単に直射、バウンスするばかりでなく、ときにはストロボ自体を使わない、あるいは、そこまではせずとも光源の扱いを一工夫する必要も出てくることでしょう。
「光の魔術師イルコのオフカメラ・ストロボライティング」では、カメラから離れた位置にストロボを配置するライティングテクニックを中心に、オフカメラライティングの基礎知識から多灯ライティング、ストロボ撮影時の構図の考え方など、「光を読む」技術を多数紹介しています。
本記事では、Chapter5「実践!オフカメラ・ストロボライティングの作品づくり」より、ストロボ1灯と長時間露光で、背景にある波の描写を操作する方法を紹介します。(光のレイヤーについてはこちらを参照)
1灯ライティングだけでも十分撮れる!
1冊目の『イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック』では、多灯ライティングを使ったさまざまな作品づくりを紹介しました。この本では、基本からしっかり学ぶために、1灯ライティングをメインに撮影のアイディアを紹介していきます。まずは1灯でいろいろ撮ってみて、2灯、3灯と増やしていってみてください。
長時間露光で波をシルクのように
- 水の表情を露光時間で決める
- 月の光を利用する
- 青い雰囲気を出すためにオレンジフィルターを使う
波の表情は露光時間で決める
波の表情は、露光時間で決定します。ちょっとだけ動きを見せたいならシャッタースピードを速く、もっとなめらかに見せたいなら遅くします。このときは、波をシルクのようにやわらかく見せたかったので、5秒間露光しました。
波打ち際での撮影は、波がこない安全な場所を探すことが大切です。しばらく波の様子を見て、波がかからないことを確認してセッティングしましょう。足場がなくてストロボが画面内に入っても、あとから消せばいいので、安全第一で!
月光ライティングで自然光+1灯ライティング
この写真を撮影したのは、2018年の10月25日、満月でした。満月の夜は、地上に影ができるほど月の光が明るいので、太陽と同じように考えます。月を被写体の前にすると「敵」になるので、逆光になるようにセッティングします。月明かりをレイヤー2の1灯に見立てたら、あとはレイヤー1から自分の好きな光の形と質を作って被写体を照らします。このときは風が強くとても寒かったので、全カットで15分ほどで撤収しています。