人物写真を撮る際に重要なテクニックは数多ありますが、その中でも特に重要度の高い技術は「光を読む力」でしょう。頭の中にあるイメージ通りに作品を撮影するにあたり、光を読む力を鍛えることは、機材選び以上に重要な要素です。
撮影時の光源として使える最も身近な光源機材は内蔵もしくはクリップオンストロボですが、作品づくりを念頭に撮影へ臨むならば、単に直射、バウンスするばかりでなく、ときにはストロボ自体を使わない、あるいは、そこまではせずとも光源の扱いを一工夫する必要も出てくることでしょう。
「光の魔術師イルコのオフカメラ・ストロボライティング」では、カメラから離れた位置にストロボを配置するライティングテクニックを中心に、オフカメラライティングの基礎知識から多灯ライティング、ストロボ撮影時の構図の考え方など、「光を読む」技術を多数紹介しています。
本記事では、Chapter4「ライティングを理解するための練習法」より、光の位置や角度でどのような表現ができるかを実感できるトレ―ニング方法を紹介します。(光のレイヤーについてはこちらを参照)
レイヤーを理解するための練習――1灯ライティング
1灯ライティングを練習してみよう
光の位置によってどんな表現ができるかを試してみます。用意するものは、光源となるライトを1つと、被写体となるものです。ここではLEDライトのリトラプロを1灯と、マネキンを使いました。環境光があると干渉してしまうので、部屋の灯りは消します。自分はレイヤー1の位置に座り、50cmくらいのところからLEDライトでマネキンを照らしながら、光の当たり方を実際に見てみましょう。最初は斜め45度くらい上から当てると効果がわかりやすいです。1人でやるなら鏡の前で確認しながらやってもいいし、動画をとって後で確認してみるのもいと思います。
やってみると、小さなLEDライト1灯でも、さまざまなライティングができることがわかります。ライトにさまざまな色のセロファンなどをつけて照らしてみると、カラーフィルターの効果もわかります。室内で簡単にできるので、いろいろ試してみましょう。
レイヤー1/左側
レイヤー1/右側
レイヤー2/左側
レイヤー2/右側
レイヤー3
レイヤー4
レイヤー2/左真横
レイヤー2/右真横
レイヤーを理解するための練習――多灯ライティング
いろいろな方向からの光を組み合わせてみよう
次は2灯以上を組み合わせる多灯ライティングを試してみます。1灯ライティングと同じようにセットして、もう1灯プラスして光を当ててみましょう。ここでもLEDライトのリトラプロを使って練習します。ミニ三脚などがあると、1灯を固定できるので便利ですが、下に置くだけもOKです。
コツは被写体を挟み込むようにライティングすることです。つまり、ライトとライトを結んだ対角線上に被写体を置きます。これをクロスライティングと言います! 1. 被写体の前を照らす光(レイヤー0、1)と、2. 被写体と背景を分ける光(レイヤー2、3、4)を意識してライティングしてみましょう。だいたい、被写体を見せたいことがほとんどなので、レイヤー1の光は必ず使います。リトラプロは光の強さも調節できるので、好みのライティングが見つかったら、パワーも調整してみるといいと思います。
レイヤー1 左側 + レイヤー2 右側
レイヤー2 左側 + レイヤー2 右側
レイヤー1 右側 + レイヤー2 左側
レイヤー1 左側 + レイヤー4 真後ろ
練習のPOINT
雨撮影はレイヤー1 + レイヤー3 のクロスライティング
雨ポートレートは、レイヤー3のバックライトが重要なポイントです。10~30mなどあまり離れすぎると光が弱くて雨粒が写らないので、だいたい被写体の高さの1~2倍の位置にバックライトを置きます。160cmのモデルなら、1.5 ~ 3m前後のところです。そしてレイヤー1の光を入れて被写体を照らします。
1.5m
左は1.5m、右は30mのところにバックライトを置いて雨を写しました。近くほど雨粒が細かくくっきりと写るのがわかります。雨の雰囲気や空気感を出したいときは、離すこともあります。
30m