人物写真を撮る際に重要なテクニックは数多ありますが、その中でも特に重要度の高い技術は「光を読む力」でしょう。頭の中にあるイメージ通りに作品を撮影するにあたり、光を読む力を鍛えることは、機材選び以上に重要な要素です。
撮影時の光源として使える最も身近な光源機材は内蔵もしくはクリップオンストロボですが、作品づくりを念頭に撮影へ臨むならば、単に直射、バウンスするばかりでなく、ときにはストロボ自体を使わない、あるいは、そこまではせずとも光源の扱いを一工夫する必要も出てくることでしょう。
「光の魔術師イルコのオフカメラ・ストロボライティング」では、カメラから離れた位置にストロボを配置するライティングテクニックを中心に、オフカメラライティングの基礎知識から多灯ライティング、ストロボ撮影時の構図の考え方など、「光を読む」技術を多数紹介しています。
本記事では、Chapter4「ライティングを理解するための練習法」より、光の当て方と、当てる光の強さの感覚を養うトレ―ニング方法を紹介します。
カメラの設定でブラックボックス状態を作る
実際に真っ暗ではなく、カメラの設定で暗くする
最後にカメラの設定を行います。マニュアル露出で、絞り、シャッタースピード、ISO感度を設定します。被写体に環境光の影響がない状態にしたいので、撮影した画像が真っ暗な背景になる設定にします。撮影環境によって数値は変わりますが、私は絞りF1.8、シャッタースピード1/250秒、ISO50、ストロボのパワーはソフトボックスをつけて1/16、被写体との距離1.5mからスタートして調整することが多いです。
真っ暗な画面になる状態が作れたら、次にレイヤー1の光を当てて、被写体の顔の明るさがちょうどよくなるように調整します。被写体の明るさだけを変える場合は、「ストロボのパワー」と「ストロボと被写体の距離」で調整していきます。背景だけの明るさを変えたい場合や、全体の明るさを変えたい場合は、露出の五角形を思い浮かべて必要な設定を変更してください!
ブラックボックス状態を作る
ブラックボックス状態とは、ストロボを当てなかったときに、真っ暗になる状態です。実際には明るいのですが、カメラの設定で真っ暗な状態を作ります。
レイヤー1の光を当てる
ブラックボックス状態からレイヤー1のメインライトを当て、肌色がちょうどよい明るさになるよう、ストロボのパワーと照射距離を調整していきます。
ストロボのパワーを理解するための練習
同じ設定でストロボのパワーだけ変えてみよう
まずは、ストロボのパワーを変えると被写体にどんな影響があるかを練習してみます。家でできる練習なので、ぜひやってみてください。カメラの設定とマネキンとストロボまでの距離は固定して、ストロボのパワーだけ変えていきます。
マネキンは、壁際から少し離してセッティング。被写体はなんでもOKです。最終的にポートレートを撮るなら、ボールやぬいぐるみなど、顔の形状に近いものが、影の出方などを確認しやすいと思います。次にカメラの設定をします。マニュアル露出で、F5.6、1/250秒、ISO50、マネキンとストロボの距離は0.525mに固定します。ストロボはCactus RF60X+ソフトボックスを使いました。この状態で、マネキンが適正になるようストロボのパワーを調整します。適正は1/2。ここから1段ずつパワーを変えていきます。1枚だと適正露出はわかりにくいですが、並べてみることで欲しい明るさがわかります。
1/1(フルパワー)
1/2(適正)
1/4
1/8
1/16
1/32
1/64
1/128
1/256
ストロボ光が壁にも当たっている場合は、ストロボのパワーの変化が背景にも影響します。