オールドレンズ・ライフ
第11回

「高画質」+「ノスタルジック」なロシアレンズの味わい PO2-2M 75mm F2

かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、スマートフォンで写真を撮るのが当たり前になった近年においても、カメラ好き、写真好きの人々から「オールドレンズ」と呼ばれ親しまれています。オールドレンズは「マウントアダプター」と呼ばれるパーツを用いることで現行のカメラに装着することができますが、これまでに発売された膨大な数の交換レンズの中から、自分好みのレンズを見つけるのも、オールドレンズ遊びの楽しみの一つです。

オールドレンズ・ライフ 2018-2019」においては、数あるオールドレンズの中でも性能面で個性が際立つ「中望遠オールドレンズ」を特集。正統派レンズからクセ玉まで、バラエティ豊かなキャラクターのレンズたちを作例とともに紹介しています。本記事では、「PO2-2M 75mm F2」の作例と解説を抜粋して掲載します。

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オールドレンズ・ライフ 2018-2019

ロシアシネレンズ随一の高描写 KMZ「PO2-2M 75mm F2」

α7II + PO2-2M 75mm F2 絞り優先AE F2 1/3200秒 +0.7EV ISO100 AWB RAW 桜が黄緑に色かぶりし、ノスタルジックな色合いだ。かすかにぐるぐるボケが感じられるものの、かろうじて持ちこたえている。

本レンズはひと頃、スピードパンクロやキノプティックのコピーではないかと噂され、マニアの間で急速に注目が集まった。現在は「それらの影響があるかもしれない」という程度に止まり、中古相場は落ち着いている。

そうは言ってもこのレンズ、ロシア製シネレンズの中ではかなり高価だ。理由は単純明快、とても写りの良いレンズだからだ。

35ミリフィルムムービーカメラのレンズなので、本来的にはAPS-C機と組み合わせて使用する。ただし、本レンズのイメージサークルはフルサイズ機も余裕でカバーし、フルサイズ環境では中望遠レンズとして利用可能だ。これが絶妙な描写をもたらす。中央部は極めて高画質。反面、周辺部は開放だとわずかに甘い。そこにアンバーの色かぶりが加わり、良く写るのにノスタルジックという味わいを生み出している。ロシアレンズの醍醐味を実感できるレンズだ。

α7II + PO2-2M 75mm F2 絞り優先AE F2 1/5000秒 +0.7EV ISO100 AWB RAW 周辺光量落ちがいくぶん強いが、周辺像の流れはほぼ感じられない。開放でも滲みが少なく、高描写タイプのレンズであることがわかる。
PO2-2M 75mm F2 中古価格:60,000~80,000円 KMZ OCT-18 mount 1948年に登場した35ミリフィルムムービー向けの望遠レンズ。レンズ構成は4群6枚のダブルガウス型だ。最短撮影距離は0.95メートル。

character notes

描写力:★★★★
ク セ:★★
機動性:★★★★
コスパ:★★

高描写なのにノスタルジック、そのギャップがたまらない。ロシアレンズの中では値が張る。

OCT18-SE 税別価格:38,704円 OCT-18マウントは、ロシア製35ミリフィルムムービーカメラ「Konvas 1M」が採用していたマウントだ。ベアリング付きネジでレンズを固定する。

オールドレンズ・ライフ 2018-2019

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

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