『永沢まことの街歩きスケッチ入門』は、絵描き・イラストレーターの永沢まことさんが、日々の暮らしを営んでいる街のなかを歩きながら、感じたこと、気になったものや人や風景を気軽にスケッチする楽しさを紹介した一冊です。
第3回では、もうひとつのスケッチの基本「色塗り」を2つの事例を通じてマスターしましょう。
スケッチが楽しくなる色トレーニング
オレンジでパンを塗ってみる
黒い線で描かれた絵を、最も美しく彩ることができるのが透明水彩です。この絵具を塗るコツは2つあります。
1-いきなり濃い色を塗らないこと。薄い色の塗り重ねによって目標の色を出すこと。
2-塗り重ねの時、下地の色をかならず乾かしてから塗ること。濡れた状態で上に塗ると、ムラが出来たり、色が濁ったりします。
線描
カンパーニュとバゲットです。これならオレンジ色を基本にした色塗りができそうです。
① 2つのパンを見た上で、最も薄くして、まず明るい色を塗ります。カドミウム・オレンジ・ライトをごく薄くパレットに溶いて全体に塗り、ドライヤーで乾かします。その後、もう1度同じ薄いオレンジを塗り重ねます。
② 次に①よりこころもち濃いオレンジを、パンの焦げ目の強い部分に塗ります。パンが少し焼けてきたように見えます。
③ ②を乾かした後、②のオレンジにほんの少し赤を加えた色で焦げ目の強い部分を塗り重ねます。
出来上がり
③の色を乾かした後、同じ色を塗り重ねます。計5回の塗り重ねで出来上がり。バックには明るいグリーンを塗ってみました。
グリーンで葉っぱを塗ってみる
透明水彩絵具の持つ最高の得意ワザ「透明感」を、グリーンの葉を塗ることで見てみましょう。
塗り重ねによって、グリーンの色の透明感が出るとともに、線描の黒い線が、より鮮明に浮き出てくるのが分かります。
線描
初夏の明るい陽を浴びたヤツデの葉っぱです。これなら明るいグリーンをベースにした色塗りができそうです。
① ヴィヴィッド・グリーンをパレットに出し、ごく薄めに溶いて葉っぱ全体に塗ります。乾かしたら、同じ色を塗り重ねます。これで葉っぱ全体の下地の色が出来ました。
② 次にパーマネント・サップ・グリーンをやや薄めに溶きます。それで1番上の明るい色の葉っぱ以外を塗っていきます。
③ 同じサップ・グリーンで、葉っぱに濃淡をつけるようにして塗ります。葉っぱの色に透明感が出てきました。
出来上がり
最後にヴィリジアンを薄く溶き、濃淡をつけながら塗っていけば出来上がりです。バックにオレンジを塗ってみました。
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