本連載は、鮮やかな色彩と独自に作り込まれた世界観で人気のイラストレーター・藤ちょこさんがキャラクター造形や描き方を解説したメイキング・ブック『美しい幻想世界とキャラクターを描く』から、アジアンファンタジー世界を描いた作品の制作プロセスを追いながら、藤ちょこさんのクリエイティビティの秘密をご紹介しています。
第7回は、キャラクターの細部や持ち物などを質感を意識しながら塗り、キャラクター全体を仕上げていくプロセスを紹介します。
キャラ塗り④ 毛の流れを意識して髪の毛を塗っていく
❶線を引くように髪の毛を塗る
まず肌と髪の境界をなじませるため、肌の色を[スポイト]ツールで取り、[エアブラシ]でおでこ周りに薄くかけます。髪のもっとも暗くなる部分には、黒色を乗せていきます。
(右)髪の毛は、流れを意識しながら線を引くように塗っていきます。
❷乗算レイヤーで髪に色味を加える
合成モード[乗算]のレイヤーを新規作成し、髪の塗りレイヤーにクリッピングして、色味を加えます。ここでも、色彩遠近法の考えをベースに毛束に応じて色を分け、髪の毛を塗っていきます。
おでこ周りなどの手前の毛束にはピンク色やオレンジ色、後ろに回り込んでいく毛束には青色を。
❸ここで少し寄り道し振袖を塗る
髪の塗りの途中ですが、右腕の振袖を塗ります。全体のバランスを見ながら進めるために、様々な場所を同時進行的に塗っていきます。
❹虹のイメージで髪の細部を描く
線画フォルダの上に合成モード[通常]のレイヤーを新規作成し、髪の細部を描き込みます。リング状のハイライトは少しずつ色を変えながら、虹のような色合いにします。合成モード[加算(発光)]のレイヤーを新規作成し、さらに髪にハイライトを足していきます。
[透明ピクセルをロック]にチェックを入れ、ハイライト自体を様々な色で塗りつぶして色が単調にならないようにします。
キャラ塗り⑤ 質感や光沢感に気を配りながらモチーフを塗っていく
❶質感に注意して金属を塗る
金属を描くときは、暗めの黄土色をベースにするとリアルになります。色のコントラストを強めにしたり、
点を打つようにハイライトを入れるのも効果的です。
【 鈴 】
リボンの赤色、飾りの青色を[スポイト]ツールで取って鈴に乗せ、周囲の色を映り込ませます。
【 提灯の取っ手 】
提灯は、使い古された質感を表現するため、鈴と比べてコントラスト差や周囲の色の映り込みは控えめです。
❷個々のパーツを描き込む
「キャラ塗り②」の❸(第5回)にて後回しにしていたパーツを、どんどん描き込んでいきます。ペンのタッチや描き込みなどを駆使して、各々の質感が出るよう気を付けます。
【 靴 】
靴の下部は漆塗りなので、白色のハイライトでツヤ感を出します。
【 腕 】
ショートパンツと同じように、肌と接する部分には薄く肌色を入れ、やわらかい印象に。
【 襟 】
衿に[鉛筆5混合]で線を入れ、金糸で織り込まれたような質感を出します。
【 提灯 】
裂けて見えている提灯の内部がもっとも明るい光源になっているので、白~クリーム色で明るく塗りつぶします。
❸刀を塗り光を与える
刃と柄の境目は、着物の襟の重ねのようなデザイン。左の腰および二の腕とデザインに共通項を持たせ、統一感を出しています。
刀身には、ショートパンツなど背後のモチーフを描き入れて刀が透けているように見せ、透明感を出します。 |
合成モード[加算(発光)]のレイヤーを新規作成し、刀身を中心に[エアブラシ]でふわっと光を入れます。 |
❹色彩遠近法でお供を塗る
女の子は一般的な白い犬張子がモチーフなので、お供はそれと対になるように黒い犬張子にしました。
これで、キャラクター部分がだいたいできてきました。
おでこ周辺などの手前にせり出している面には、彩度高めの青色を塗って立体感を演出します。
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