永沢まことの街歩きスケッチ入門
第2回

スケッチの基本「あなたの線」を作る

『永沢まことの街歩きスケッチ入門』は、絵描き・イラストレーターの永沢まことさんが、日々の暮らしを営んでいる街のなかを歩きながら、感じたこと、気になったものや人や風景を気軽にスケッチする楽しさを紹介した一冊です。

第2回では、街に出かける前に、スケッチの基本である「線」の描き方をマスターしましょう。

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細長いモノは腕のストロークで楽に描ける

細長い線は思い切り良く

線の中でも、一番気持ち良く引けるのは細長い線です。真一文字にグーンと描くのもいいし、下からすくいあげるように描くのもいいです。絵を描く前に、そんないさぎ良い線を1本引いてみると「今日はいけるぞ」という気になります。

① 長ネギを描いてみます。根元のところに少し力を入れてから、思い切り良く一気に描きましょう(筆サイン極細使用)。

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② セロリの線も根元から速度をつけて描くと感じが出ます。葉っぱは細いペン(ピグマ0.2mm)で描いてみました。

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③ 長く勢いのある線を引く時は、線の到達点をしっかり意識すること。迷いのないスッキリした線が引けます。

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④ 細長く勢いのある線は、濁らない色でシンプルに塗ると、より線が引き立ってきます。

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丸っこいモノは手首でなく腕で描く

何かを包み込むように

丸っこい線は、自分のために引く線ではないですね。他者を意識するというのでしょうか、何かを包み込むように描いていくと立体感のある線になります。

人の顔を描く時等、この丸っこい線はかなり役に立ちます。

① 白い空間にある丸っこいモノを線で包んでいくように描きましょう。手首を使わず、腕で描くようにすると伸びやかな線が引けます。

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② 丸っこいモノと言っても、デコポンとトマトでは、肌触りも固さもかなり違います。線の使い方で描き分けてみましょう。

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③ 異なった4つのフルーツに、さらに違った「バスケットの線」が加わると、線同士の新しいハーモニーが生まれてきます。

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④ 4つの丸っこいモノに色を塗ってみました。丸みと質感をより強調するため、それぞれに少し陰をつけ、ハイライトを入れました。

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フワッとしたモノは気持ちもフワッと

ペンにおまかせする感じで

① フワフワの毛並みは力を抜いた線で、1本ずつ丁寧に描いていきます。同じような方向の線にならないようにすると柔らかさがうまく出ます。

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② 毛並み以外の耳や目等は、やや力を入れた線で描くと、全体にメリハリが出てきます。

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④ このクマさんは、タオル地のような表面です。やや太めのペン(リブ)で全体に力を入れずに描き、細いペンで毛羽立ちを入れてみました。

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④ 2つのフワフワ人形に、色を塗りました。それぞれの白いくぼみに、グレーの陰が入っています。

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苦手意識よ さようなら 四角いモノを描くコツ

箱モノは「立っている」ように描くこと

① 箱のカタチをまず線で描きます。次に図のように「透かし線」を入れます。実線と点線がうまく平行になれば、箱は「立っている」ように見えるはずです。

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② パースのついた箱を描いてみます。その線と平行に「透かし線」を入れると箱が立体的になります。いろいろな角度の箱を描いて、この「透かし描き」をやってみてください。

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③ 「立っている」箱に文字や商品を描きました。もし代わりに窓を入れたら、街に立っているビルになるでしょう。

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④ ハーブティーの箱とシリアルの箱の色を塗ってみました。グレーで陰をつけたらさらにしっかり立ってくれました。

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永沢まことの週末は街スケッチ-cover
永沢まことの街歩きスケッチ入門

 


著者プロフィール

永沢まこと

永沢まことプロフィール

Nagasawa Makoto

イラストレーター。絵描き。1936年東京生まれ。学習院大学政治経済学部卒。アニメーターとして活動の後、フリーランスとなる。
78年渡米。ニューヨークに8年間在住する中で、線描による独自のスケッチ・スタイルを確立。帰国後は世界各地を旅しつつ、創作と著作活動を行っている。朝日カルチャーセンター、池袋コミュニティ・カレッジ講師。

著書:『ノンフィクション・ニューヨーク』『東京人間図鑑』『イタリア・トスカーナの優雅な食卓』『永沢まことのとっておきスケッチ上達術』(以上草思社)、『絵を描きたいあなたへ』『旅でスケッチしませんか』(以上講談社)他、多数。

永沢まこと・オフィシャルブログ
http://makoart.exblog.jp/

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