永沢まことの街歩きスケッチ入門
第1回

「街歩きスケッチ」をはじめよう!

『永沢まことの街歩きスケッチ入門』は、絵描き・イラストレーターの永沢まことさんが、日々の暮らしを営んでいる街のなかを歩きながら、感じたこと、気になったものや人や風景を気軽にスケッチする楽しさを紹介した一冊です。

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「街角スケッチ」ってなんでしょうか。永沢さんは、この本の「はじめに」で次のように語っています。


普通スケッチと言えば、風景とか静物を題材にして絵を描くことを思い浮かべるでしょうが、「街歩きスケッチ」はちょっと違います。私たちの多くが、日々暮らしているのは、街です。山や海のある自然の多い風景ではない、人工的な都市空間の中で仕事をし、学校へ行き、交通機関を使い、生活をしています。そうした忙しい街で生きる人の中にも「絵を描いてみたい」「スケッチを楽しみたい」という人はたくさんいるはずです。
その人たちに、「絵を描くことのイメージを、思い切って切り替えてみませんか?」という具体的な提案が、この街歩きスケッチというわけです。


この連載は、絵の初心者でも、経験者でも、とにかく「絵を描きたい」と強く思っている方かたにお贈りします。第1回の本記事では、永沢まことさんが伝授する、街歩きスケッチの「ゴールデンルール」をご紹介します。

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街歩きスケッチをする時は、小さなスケッチブックを使います。文庫サイズのものを使ったりもします。ペンは、耐水性の筆ペン1本あれば、何でも描けます。絵具はふだん持ち歩かないですね。あとでゆっくり塗ることにしています。


───── ゴールデンルール その①

すべて線で描く

線を使えば何でも描ける

下描きをせずに、いきなりペンでスケッチする、と言うとビックリする人が多いようです。でも大丈夫です。ペンは誰でも文字を書く時に使っています。字を書く時に、いちいち下書きする人はいないでしょう。少し変わった文字を書くような軽い気持ちでペンを持ち、線描きを始めてください。

動くモノ

動くモノを描く時は、ペン先に力を入れずに、速度をつけた線で描きます。ひらがなをサラサラッと書くように。

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咲く花

柔らかい花びらは、力を抜いた軽い線で描くと感じが出ます。桜の葉は、根元の方からシャープな線で描い
てみるといいでしょう。

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観察によって線を見いだす

絵を描くということは、モノのカタチを描くということです。
目の前のモノが、どんなに目立つ色であっても、色を見ずにカタチだけを見ることです。心静かにカタチを見ていると、まずはモノをかたどる輪郭の「線」が見えてきます。

シューズ

シューズのような難しい形のモノは、まず全体の輪郭(シルエット)を、1 本の線で描く練習から始めるといいです。

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自転車

自転車やクルマ、電車等の工業製品を描く時も定規やコンパスを使わずに、フリーハンドで線を描くようにしましょう。

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街や人

いったん街へ出ると、建物も人物も混じり合って見えます。落ち着いてゆっくり観察することです。やがて自分の描くべき「線」が見えてきます。

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───── ゴールデンルール その②

かならず実物を見る

実物だけが描くことを教えてくれる

どんなモノを描く時も、かならずそのモノを自分の目で直接見るようにすること。小さなアリを描く時も、ビルが立ち並ぶ風景を描く時も同じです。

「描きたい」と感じた実物と、しばし無心で向き合うのです。本当に描きたいのか、そうではないかが、何となく分かってきます。

小さい実物

小さなモノを描く時は、同じ目線で向き合います。たまに拡大鏡で見てみるのもいいです。

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にぎやかな実物

ごちゃごちゃしているモノは、あれこれ見ると疲れるだけです。どれかひとつに絞ってみるか、全体をまとめてざっくりと見るか、どちらかにします。

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でっかい実物

どんなに巨大なモノでも、圧倒されては描けません。「大きいのも大変ですね」ぐらいの気持ちで対すると、相手もいいポーズをとってくれます。

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───── ゴールデンルール その③

自分の感じた色を塗る

色を塗るのは絵具ではない?

どんなに良い水彩絵具セットをそろえても、絵具が勝手に思い通りの色を塗ってはくれません。絵具はただの道具です。

色を塗るのは、あなた自身の色に対するセンスです。自分の色彩センスを意識して磨いていけば、自然に思い通りの色が塗れるようになります。

赤いトマト

1個の赤いトマトを3人の人が塗ったら、3つの違った赤いトマトが出来ます。同じ赤でも黄色味がかっていたり、ピンクがかっていたりと。

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青空とグリーンの木

もしこんな風景を、別の3人が塗ったら、違う色塗りになります。10人が塗ったら、もっと違ってくるかも。

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ピンクの東京駅

東京駅の外壁はレンガで出来ています。何人かで東京駅をスケッチすると、レンガを明るいピンク色に塗る人がいたりします。

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セピアの東京駅

レンガの重厚な感じが好きな人は、セピア色に塗ります。他にも真っ赤に塗った人、紫に塗った人もいます。どれも確かに東京駅です。

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永沢まことの街歩きスケッチ入門

 


著者プロフィール

永沢まこと

永沢まことプロフィール

Nagasawa Makoto

イラストレーター。絵描き。1936年東京生まれ。学習院大学政治経済学部卒。アニメーターとして活動の後、フリーランスとなる。
78年渡米。ニューヨークに8年間在住する中で、線描による独自のスケッチ・スタイルを確立。帰国後は世界各地を旅しつつ、創作と著作活動を行っている。朝日カルチャーセンター、池袋コミュニティ・カレッジ講師。

著書:『ノンフィクション・ニューヨーク』『東京人間図鑑』『イタリア・トスカーナの優雅な食卓』『永沢まことのとっておきスケッチ上達術』(以上草思社)、『絵を描きたいあなたへ』『旅でスケッチしませんか』(以上講談社)他、多数。

永沢まこと・オフィシャルブログ
http://makoart.exblog.jp/

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