結婚式とは、多くの人にとって、一生の思い出になる人生の一大イベントです。新郎・新婦の晴れ姿はもちろん、式に出席した親類縁者の顔ぶれや表情は、その日、その瞬間にしか存在しえないものです。それだけに、結婚式を記録に残すウエディングカメラマンの責任は重大。絶対に失敗できない過酷な仕事です。
では、ウェディングカメラマンに求められる技術や素養とは、一体どういったものなのでしょうか。「ウエディングフォト撮影&ライティング実践講座」では、現役のウエディングカメラマンが仕事に臨む際の心構えから段取り、必要とされる技術、仕事環境にいたるまで詳細な解説を行っており、ウエディングカメラマンという仕事を理解するのに最適な一冊です。
本記事では、前回に引き続きChapter2「ウエディングを撮るための撮影&ライティングテクニック」より、屋内におけるライティングの一例を、抜粋してご紹介します。
ダイナミックな夜景とともに、その場の光源のみでふたりを撮る
ダウンライトで新郎新婦を浮き上がらせる
一見、ストロボで光を演出しているように見えますが、その場の環境光のみで撮影した1枚です。上の踊り場から見下ろすような格好で三脚をセットし、ふたりには絶対に動かないように指示を出して、0.5秒の低速で夜景を入れ込みながら撮影しています。
この写真のポイントは、ふたりの真上にセットしたライトです。このライトでダウンライトをつくり、そこから“ぼやっと”やわらかく拡散する光のみで、部屋全体を明るく撮影しています。ふたりの存在感をこのライトのみで浮き上がらせるために、頭上のシャンデリアも消灯しました。大窓からのダイナミックな夜景と豪華なシャンデリアによる演出で、非常にインパクトのある描写になりました。
このシーンはもともと撮る予定はなく、日中この場所で撮影した際に、夜になったらすごいロケーションになるのではと急遽予定に組み込みました。直感を信じることの大切さを改めて実感したカットです。
プロポーズのシーンを、夜景を背景に美しく撮る
街灯が当たっているような自然さを意識する
新郎からプロポーズのシーンを撮りたいとのリクエストがあり、前撮りしたカットです。ドラマチックなシーンにしたいと考え、美しい夜景をロケーションに選びました。新婦の真後ろにセットしたモノブロックストロボ1灯を、きれいなハイライトが新郎の顔に入るように、向かってやや左向きに角度を調整して照射しています。このシーンは自然な仕上がりを意識しています。そのため、ストロボもなるべくその場の街灯が当たっているようなイメージでライティングを行いました。新婦のドレスにも美しい透過光が入り、アクセントになっています。
そして、構図にも非常にこだわっています。新郎が差し出した指輪を持つ手が、ちょうどビルの間の空間にくるように、意識しながら構図を決めています。周囲には障害物があり、構図を決めるのが意外に難しい場面でしたが、望遠レンズで余計なものを排し、うまくクローズアップしながら撮影できました。