「確定申告」は、国税である所得税を自ら計算して、税務署に届け出るための手続きです。「税金を正しく納めるための仕組み」であり、知っておくと便利ですが、いまいちよくわからない、と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A」(桑原清幸・著)では、税金の基礎や収入の区分、帳簿の付け方から節税のコツまで、確定申告にまつわる素朴な疑問について、ケースごとの事例を交えながら、詳しく解説しています。
本記事では「個人事業主として独立する際の手続き」に関するQ&Aを紹介します。
Q.
私はカメラマンです。広告代理店で写真撮影のアルバイトをしながら、個人でもカメラマンの仕事を引き受けています。今年は個人で受注する仕事が増えて、アルバイトの給料よりも、個人の仕事の収入のほうが多くなってきました。何かすべきことはありますか?
A.
「副業」で始めたクリエイターの仕事も、「本業」といえるくらい収入が増えてきたら、税務署に「開業届」を出しましょう。これで税務署に、「私は個人事業主です」「クリエイターとして本格的に事業を開始しました」と宣言したことになります。
「開業届」は、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」という書類で、税務署に行けばもらえますし、国税庁のウェブサイトからPDFファイルでダウンロードできます。
この開業届には、事業を開始した日付を記入します。開業届は、事業を開始した日から1カ月以内に税務署に提出しなければなりません。もし遅れてしまっても特にペナルティはありませんが、早めに提出しておきましょう。
なお、「副業」と「本業」の境目については、実は明確なルールがありません。人それぞれ、仕事の内容や収入の大きさなど状況が違うので、各自で「事業」といえるレベルかどうかを判断しなければなりません。
事業といえるかどうかの目安としては、例えば以下のようなものが考えられます。
- ビジネスとして行っているかどうか(単なる趣味ではない)
- 有料で販売・提供しているかどうか(ボランティアではない)
- 収入が継続・反復しているかどうか(単発の臨時収入ではない)
- この仕事に一定の時間を割いているかどうか(片手間ではない)
- 生活するうえで、この収入に頼っているかどうか(ある程度の収入がある)など
これらは明確なルールとして決められたものではないので、ケースバイケースで判断するしかありません。また、開業届を出すことで、確定申告での所得の区分が変わります。これまで「雑所得」として申告していたものが、「事業所得」となります。
所得税ではこの違いは大きくて、事業所得は他の所得と損益通算ができるなど、いろいろなメリットがあるのです。
もし、まだ片手間で規模が小さい段階で開業届を出してしまい、税務署から事業と認められないと、事業所得ではなく、雑所得とされてしまい、損益通算などのメリットが受けられなくなってしまいます。
クリエイターとして本格的に稼げるようになってきたら、早めに「開業届」を税務署に出しておきましょう。これであなたも独立開業、立派な「個人事業主」です。
<玄光社の本>
<著者の新刊>
本書の著者・桑原清幸さんの新刊「駆け出しクリエイターのためのお金と独立準備Q&A」が10月29日に発売されます。本書と併せて、独立後の仕事とお金の管理に、是非お役立てください。