売上がアップする商品写真の教科書
第2回

商品の魅力を引き出す演出と画面構成

オンラインショップの商品写真は、その商品の売上を左右する大きな要素のひとつです。商品の販売を前提に撮られる「商品写真」は、単にきれいな写真であればいいわけではなく、写真を見た人に商品の特長や魅力をしっかりと伝える写真でなくてはなりません。

売上がアップする商品写真の教科書」では、機材選びから被写体別の撮影テクニック、ライティング、レタッチ、SNS活用にいたるまで、商品撮影の実務にまつわる知識と技術を、詳細かつわかりやすく解説しています。

本記事では、1章「目的別実践テクニック」より、写真を撮る際に商品を飾るスタイリングテクニックと、構図の作り方を一部抜粋して掲載します。

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売上がアップする商品写真の教科書

訴求イメージを強めるスタイリングテクニック

商品を自分で撮るときは、カメラマンでありながら演出家になる必要がある。背景の色や素材、一緒に添えるアイテムによって、商品の価格、季節感、カジュアルやナチュラル、スタイリッシュといったビジュアルイメージを作ることができる。スタイリング能力はセンスと思われがちだが、撮影テクニック同様に技術の要素が強く、商品を魅力的に見せるテクニックは、ある程度パターン化されている。

いくつかの代表的なテクニックを紹介しよう。

光で季節や時間を演出する

上下の写真は初夏の商品をイメージして撮影。光は向きだけでなく、色や強さで時間や季節を表現できる。初夏らしい強めの光で撮影。背景の新緑も、季節を表現する手助けをしている。

色のイメージで演出する

色はそれぞれイメージを持っている。爽やかな初夏のイメージを作るため、水色の色紙を背景にした。

イメージと合わなかった例

ナチュラルな木目の板は、季節感を出しにくい。逆に、季節のイメージがないため、どんな商品にも合わせやすいというメリットもある。

焼きたてのイメージを作る

リンゴパイを撮影。焼きたてをイメージさせるため、網の上に配置。作業工程をイメージさせるスタイリングで、臨場感を伝える。

味を想像させるスタイリング

食べ物をカットして中の具材を見せることで味を想像させることができる。また背景に、素材を配置するのも効果的だ。

失敗例

リンゴを背景にして撮影。商品より背景の存在感が強くなり、不自然な印象になってしまった。

背景で季節を表現する

マロンパイを撮影。上の写真は、秋をイメージさせるため、茶色の背景の上に枯れ葉を敷きつめて撮影。下の写真は、中に栗が入っていることを伝えるため、背景に栗を配置した。2つの訴求イメージを組み合わせると、より印象的な写真になる。

味を想像させるスタイリング

合わせて成功した例

秋のイメージと、栗が入っているイメージを合わせた成功例。少しアングルを下げて、パイのディテールも分かるようにしている。複数の要素が入っても、色を統一することでまとまり感が生まれた。

平面構成・立体構成で商品を配置する

商品写真では、商品を平面的に配置するのか、立体的に配置するのかによって、見え方や与える印象が変わってくる。

平面構成とは、平面的に見えるように構成すること。真俯瞰や真横からのアングルで奥行きを感じさせないように撮影する。規則正しく並べたり、リズム感を意識するように並べると良い。

立体構成とは、立体的に見えるように構成すること。商品の側面が見えるように斜俯瞰(斜め上)からのアングルで、手前から奥に商品を配置して、奥行きや高さを強調するように撮影する。

訴求イメージに合わせて構成を変えていくようにしよう。

平面構成

真俯瞰からのアングルでタルトが正円になるように撮影して、幾何学的な画面を作った。

平面構成のイメージ

  • かわいらしい
  • 平面的
  • 落ち着いている
  • 幾何学的

立体構成

斜俯瞰からのアングルでスタイリングされたケーキの奥行きや立体感を伝える。

立体構成のイメージ

  • かっこいい
  • 立体的
  • 動きがある
  • 存在感

基本は3分割構図

写真の構図法の中で最も使いやすく、とりあえずこれだけ覚えておけば便利というものが「3分割構図」だ。縦横それぞれ3分の1ずつに区切り、分割線上やその交点に商品や商品のメイン部分を配置すると、適度な余白が自然に作られ、バランス良くまとまる。上記の平面構成や、立体構成でも使いやすく、画面内にたくさんの要素をまとめるときでも非常に便利な構図だ。

商品の香水を3分割構図の交点に配置して、被写体と背景の割合をバランスよくまとめた。

前ボケと商品の位置を3分割構図を意識して配置。前ボケを入れることで雰囲気が良くなる。

猫の表情を3分の2の割合で配置。インパクトを出しつつ、バランスよくまとめた。

3分割構図の交点に視線が集まりやすい人物の目を配置。モデルの顔が向いている方向に余白を作り、写真を見た人の視線を誘導している。

 

 


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著者プロフィール

やまぐち千予


料理・スイーツ・人物を中心に、多くの企業広告の撮影を行っている。優しく生き生きとした「ストーリーのある」写真撮影が特徴。デジタルハリウッド大阪校講師、FUJIFILM Xセミナーズ講師など活動は多岐。著書に「売上がアップする商品写真の教科書」(玄光社)、「これからはじめる デジタル一眼カメラ 写真と撮影の新しい教科書(SBクリエイティブ)がある。

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