「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第16回のテーマは「ピアノ」。ピアノ自体や演奏者に注目するだけでなく、アングルを工夫して変わった視点を見つけることで、思いもよらない写真が撮れる魅力的な被写体です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. グランドピアノは角度によって多彩な切り取り方ができる。いろいろな方向から眺めてみよう。
2. 黒ピアノの場合は、ピアノに余計なものが映り込まないよう、注意と準備が必要。
ピアノを弾く人を、鍵盤の反対側から撮影しました。グランドピアノの屋根に映った人の姿が幾何学的に見えて面白いなと感じ、シャッターを切りました。写真は、実際に撮ったままではなく、180度回転させています。その方が、より不思議な感じがして良いなと思ったので…。
グランドピアノは視点の宝庫
ピアノを撮る時は、いつも「形」に注目しています。特に、グランドピアノは屋根をあけると、変わった構造になります。どこから覗いて撮るかで、だいぶ印象が異なってきます。私は鍵盤側からではなく、反対側から覗いたり、屋根の裏側の写り込みを撮ったり、内部にある弦や駒に注目するのが好きです。ピアノを撮影する前に、一度ピアノの周りをぐるぐる回って、あらゆる角度から眺めてみましょう。新しい視点を発見できると思います。
余計なものの映り込みに注意
黒いピアノの撮影で気をつけなければならないことは、側板や屋根など、黒い部分に「映り込んでしまうモノ」です。黒いピアノの表面はピカピカとしているので、いろいろなものが映り込みます。そのまま撮影してしまうと、ときどき、黒い部分に自分の姿や、近くに置いてあるものがバッチリと映り込んでしまいます。それは非常にカッコ悪いので、私は大きめの黒布を必ず持参して、近くのものにかけたりして、映り込みを防ぐようにしています。
室内のグランドピアノを撮影した、ザ・王道のカットです。夕暮れ時の室内に佇むピアノと、周りの澄んだ空気をそのまま写したいと思いました。爽やかな光を演出するために、色みは青系に調整しています。
廃屋に置かれた、壊れたピアノです。数個だけ残った白い鍵盤が、黒い板の上で肩身狭そうにしているところが気になったので、そこが際立つように撮りました。
アップライトピアノの正面に窓があり、そこで指の練習をするピアニストの姿がピアノに映り込みました。ピアノを弾いていないけれども、音が聞こえるような気がして、思わずシャッターを切りました。