光の魔術師イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック
第9回

様々な条件に合わせたライティングで、表現の幅を拡げよう!

光の魔術師イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック」は、タイトルの通り、人物撮影時におけるラインティングテクニックを指南する主旨の書籍です。本書ではストロボライティングの基本と、後幕シンクロやマルチ発光などの応用技術をカバーしていますが、このほかにもストロボの基本を学ぶ前段階として、自然光を活用した撮り方も解説しているのが特徴となっています。

本記事では、チャプター2「実践!イルコのポートレート・テクニック」より、特定条件下で写真表現をコントロールする方法をいくつか紹介します。

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昼間でも夜のように撮る

昼間の撮影方法については第7回の日中シンクロなどで解説しましたが、もう1つおもしろい撮影方法があります。それは、昼間なのにまるで夜に撮影したかのように撮影する方法です。極端に周囲を暗くする状況は、カメラの設定がもっとも暗くなるように(=シャッター速度が速くなるように)露出の三角形(F値、ISO感度、シャッター速度)の組み合わせを考え、さらに露出の五角形(F値、ISO感度、シャッター速度、ストロボと被写体との距離、ストロボパワー)でストロボのパワーと被写体との距離をプラスして考えます。シャッター速度が速くなるので、ハイスピードシンクロで撮影します。

露出の正解はありません。暗く撮ったほうがいいときもあれば、明るく撮ったほうがいいときもあります。「こういう明るさで撮りたい」というイメージがあったとき、ライティングで調整ができると表現の幅が広がります。

キヤノン EOS-1D X / EF24mm F1.4L II USM /マニュアル露出(F1.4、1/8000秒)/ ISO50 /WB:マニュアル/ストロボ使用

シャッター速度を速くして周辺を暗くする

キヤノン EOS-1D X / EF85mm F1.8 USM /マニュアル露出(F1.8、1/800秒)/ ISO50 / WB:マニュアル

最初の写真とほぼ同じ場所で、明るさを変えて撮影しました。上の写真は1/8000 秒でクリップオンストロボ1灯、右の写真は自然光のみで1/800秒です。シャッター速度を変えることで背景の明るさを自在に変えることができ、そこに光を加えることで、さまざまな表現ができます。

カメラの設定は、絞りは常に開放だからF1.4、感度はもっとも暗くなるようにISO50に設定しました。この場合、ハイスピードシンクロを使います。使ったストロボはMG8000で、フル発光しています。

ストロボは1灯を直当て、広角レンズで顔を小さく

ストロボにアクセサリーをつけると、直射した場合に比べて、被写体に届く光量が2~3段ほど減光します(アクセサリーの種類によって異なります)。さらに背景を暗くしたい場合は、ストロボを直接被写体に当てます。

直当てだと、被写体に当たる光があまりきれいではないので、24mmの広角レンズにして被写体の顔が小さめになるようにします。自然光は光がやわらかくきれいに回るので、左の写真では85mmを使用しています。光の質に合わせて、レンズの焦点距離を選択します。

橋のラインを強調して奥行き感を出しました。やや上から狙うことで、空のスペースを少なくしています。

曇り空を使ってスタイリッシュに仕上げる

曇ってるときはあまり光の条件が良くないと思ってる人もいるかもしれませんが、最高の写真が撮れます!

太陽をストロボにたとえると、曇ってるときは、直当てのストロボではなく、雲アクセサリーを通した光になっています。ですから、何もせずにアンブレラやソフトボックスを使ったような、やわらかい光ができています。そんな条件なら、自然光で撮るのもアリ!

また、曇り空は少しアンダーにするだけで、かなりドラマチックな雰囲気になります。下の写真は、ややアンダーめの写真で重い曇り空の陰影を強調して、かっこいい仕上げにしました。薄曇りなら明るめにするなど、雲の表情で決めたいですね!

キヤノン EOS-1D X / EF24mm F1.4L Ⅱ USM /マニュアル露出(F1.4、1/200秒)/ IS50 / WB:マニュアル/ストロボ使用

1灯ライティング、WBは5600Kで暖かく

上の撮影では、ストロボを使いました。左側、被写体の前方のレイヤー1から、直当てをしています。こういう、一瞬の動きを写し止めるようなシーンで、ストロボはとても効果的です。被写体を浮き上がらせ、視線を誘導する効果もあります。

また、菜の花の黄色い色味を活かしたいと思ったので、ホワイトバランスは5600Kにして、やや暖かい印象にしました。雲のドラマチックな陰影を取り入れたかったので、24mmで撮影しています。

目立つ嫌な色はRAW現像で彩度を下げる

曇り空のときは、ドラマチックなトーンでまとまっているので、彩度の高い派手な色は雰囲気を邪魔することがあります。たとえば、下の写真のような赤いドレス。このときは、ドレスの色がかなり濃かったので、RAW現像で少し彩度を抑えました。雪の中で赤が邪魔をしないようにしました。こんな風に、ちょっと抑えたい色や、強調したい色があるときは後から色を個別に調整したりします。

上は撮ったままの色合い。冷たい雪の中で赤が映えるのですが、ちょっと色味が濃くてイメージと違います。右は赤の発色を抑えるために、輝度を少し下げています。全体的にホワイトバランスを少し暖色よりにしました。

赤の色味を少し抑えると落ち着きます。

 


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光の魔術師イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック

著者プロフィール

ILKO ALLEXANDROFF (イルコ・アレクサンダロフ)

ブルガリア出身、神戸在住のフォトグラファー。
ファッション、ポートレート、ウェディングなどを中心に活動し、
ストロボを使った独自の撮影スタイルがブレイク。
YouTubeに撮影技術を紹介する動画を多く投稿し、
Facebook、Instagram等のSNSでも多くのファンを獲得する。

書籍(玄光社):
光の魔術師イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック

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