光の魔術師イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック
第8回

カラーフィルター越しの光を当てる「カラーシフト」のテクニック

光の魔術師イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック」は、タイトルの通り、人物撮影時におけるラインティングテクニックを指南する主旨の書籍です。本書ではストロボライティングの基本と、後幕シンクロやマルチ発光などの応用技術をカバーしていますが、このほかにもストロボの基本を学ぶ前段階として、自然光を活用した撮り方も解説しているのが特徴となっています。

本記事では、チャプター2「実践!イルコのポートレート・テクニック」より、日中シンクロ撮影と多灯ライティングのテクニックについての記述を紹介します。

カスタムホワイトバランスって何?

キヤノン EOS-1D X / EF85mm F1.8 USM /マニュアル露出(F1.8、1/125秒)/ ISO200 / WB:マニュアル/ストロボ使用

カメラによって呼び方は違いますが、ホワイトバランスの項目の中に、「カスタムホワイトバランス」、または「マニュアルホワイトバランス」という機能があります。本来の目的は、撮影場所によって光の条件が異なるので、その場所での正確なホワイトバランスを得るための方法です。白い紙や市販の18%グレーチャートなどを撮影して、その場の光の色をカメラに登録することで、カメラに正確な色を設定します。

これを本来の使い方ではなく、たとえばグリーンを白と認識させることで、色がシフトします。これをカラーシフトと呼んでいます。カメラ設定のホワイトバランスには、「オート」「太陽光」「曇り」などあらかじめ用意されている設定がありますが、それは使いません。2000Kくらいから10000Kくらいの一直線上の色では表せない、微妙なニュアンスの色にはならないからです。

カスタムホワイトバランスの方法は、この連載の第4回も参考にしてくださいね!

グリーンフィルターを撮影してWBプリセットを設定しておく

私が登録している色のひとつに、グリーンがあります。グリーンフィルターを撮影して、カメラにこの色を白と認識させることで、実際に撮影すると色相環の反対側にある紫色のホワイトバランスになります。

このホワイトバランスを使うときは、マニュアルホワイトバランスから呼び出して設定します。全体に紫色になるので、被写体も紫色になります。そこでストロボにグリーンフィルターをつけて被写体に当て、色を元に戻しています。

キヤノン EOS-1D X / EF85mm F1.8 USM /マニュアル露出(F1.8、1/125秒)/ ISO200 / WB:マニュアル/ストロボ使用

グリーンフィルターをピントを外して撮影すると、色だけの情報の画像ができます。これをカメラのマニュアルホワイトバランスに設定しておきます。

ROGUEのフィルター、Steel Green。これを撮影してホワイトバランスを設定、ストロボにもつけています。

被写体がブラックボックスになる状態からスタート

グリーンフィルターを撮影して登録しておいたマニュアルホワイトバランスは、紫色になるホワイトバランス設定です。これを使うときは、被写体がブラックボックスになる状態からスタートします。

カラーシフトで夕日を印象的に

ライカ Q / Summilux 28mm F1.7 /絞り優先AE(F2、1/40秒)/ ISO 400

上で説明したカスタムホワイトバランス(マニュアルホワイトバランス)を、もう少し詳しく説明していきますね!

グリーンフィルターをマニュアルホワイトバランスに登録して撮影時に呼び出すと、全体的に赤味がかった色合いになります。どんな状況に向いているかというと、夕暮れ時に今ひとつ焼けなかったときに夕焼け空の色にしたり、曇天でぱっとしない空模様のときにドラマチックなニュアンスを入れる、といった使い方です。ケルビンだけで変更するのは、次で紹介する夜景ポートレートや、星空ポートレートです。

下は、実際にグリーンフィルターで作ったプリセットを使うと、どのように見え方が変わるのかという例です。

そのまま撮影

グリーンフィルターWBプリセット+ストロボ

グリーンフィルターでWBプリセット、ストロボなし

そのまま撮影するとイマイチ焼けなかった夕日が、マゼンタ色の夕日になります。ストロボを使わないと、逆光で被写体は真っ暗です。また、フィルターを使うとだいたい1段くらい減光するので、ストロボのパワーを上げる必要があります。

カラーシフトに向いた状況は「逆光シルエット」

グリーンフィルターを使ってカラーシフトするとき、どんな状況でうまくいくかというと、ブラックボックスが作れる状態です。つまり、逆光で被写体がシルエットになっているとき。さらに空が真っ暗じゃないとき。被写体だけがブラックボックス状態ということです。

NG
OK

オレンジフィルターで被写体の色を戻す

キヤノン EOS-1D X / EF135mm F2L USM /マニュアル露出(F2、1/100秒)/ ISO1600 / WB:マニュアル/ストロボ使用

フィルターの中で私がもっともよく使うのは、オレンジフィルターです。背景を少し冷たい、青っぽい色で撮りたいときは、カメラのホワイトバランスをケルビン指定で2700~3000Kくらいにします。そうすると被写体も青くなってしまいます。

ストロボのホワイトバランスはだいたい5600Kくらいですが、色温度を下げたことでストロボが当たってるところも青寄りにふられるので、ストロボにオレンジ色のフィルターをつけてケルビンを上げることで、ストロボが当たっている被写体が差し引きして元の色に戻るのです。

青空や星空ポートレートもオレンジフィルターが必須

オレンジフィルターはとても小さいけど、重要な道具です!必ず鞄や財布に入れてます。どんなシーンで使うのかというと、以下のようなシーンです。

1. 夜景ポートレートではナトリウム光など暖色系の光が多く入るので、昼間と同じ5600Kくらいで撮ると、背景はかなり暖かい色に写ります。暖色の色味に引っ張られて、被写体の印象が弱くなってしまうので、3000Kくらいにしたいです。

2. 星空ポートレートも、3000K前後で撮ることが多いです。

3. バックライトを強めに入れて、全体の雰囲気を青っぽく撮りたいとき。

4. 雨ポートレートで、雨を青い雰囲気で写したいとき。

こんなシーンではケルビンを低く設定して全体を青くするので、ストロボにオレンジを足して被写体の色をきれいに出します。

夜景ポートレート

星空ポートレート

オレンジフィルターをつけるとストロボのパワーが下がる

どんなフィルターでもそうですが、ストロボに装着するとパワーが下がるので、その分調整が必要です。フィルターなしのときに1/128パワーなら1/64パワーに上げて、ストロボの光量を合わせます。また、販売されているオレンジフィルターの種類は、フィルターの濃さによって1/1、1/2、1/4があります。

オレンジフィルターを装着したところ。私がよく使うのは、いちばん濃い1/1のオレンジフィルターです。


<玄光社の本>

光の魔術師イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック

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著者プロフィール

ILKO ALLEXANDROFF (イルコ・アレクサンダロフ)

ブルガリア出身、神戸在住のフォトグラファー。
ファッション、ポートレート、ウェディングなどを中心に活動し、
ストロボを使った独自の撮影スタイルがブレイク。
YouTubeに撮影技術を紹介する動画を多く投稿し、
Facebook、Instagram等のSNSでも多くのファンを獲得する。

書籍(玄光社):
光の魔術師イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック

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