「光の魔術師イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック」は、タイトルの通り、人物撮影時におけるラインティングテクニックを指南する主旨の書籍です。本書ではストロボライティングの基本と、後幕シンクロやマルチ発光などの応用技術をカバーしていますが、このほかにもストロボの基本を学ぶ前段階として、自然光を活用した撮り方も解説しているのが特徴となっています。
本記事では、チャプター1「撮影を始める前に知っておきたい基本」より、「ホワイトバランスに関する考え方」の記述をご紹介します。
ストロボにフィルターをつけることで被写体の色を戻す
ホワイトバランスは、「太陽光」「日陰」などのカメラのホワイトバランス設定は使いません。使うのは、「ケルビン(色温度)指定」と「ホワイトバランスプリセット」の2つだけ。カメラの機種によって呼び方が違うけど、数値でケルビン指定をするか、カメラがグレーと認識する色をずらすことで、色を変える方法です。さらに、被写体の色を元に戻すために、ストロボに色つきのフィルターをつけることで、肌色がきれいに見える色に調整します。ストロボは昼間の5700Kくらいなので、その分も調整が必要です。
整理すると、写真の色には「全体の色」と「被写体の色」があります。そして、全体の色はケルビンかホワイトバランスプリセットで調整。被写体の色はストロボにつけるフィルターで調整します。ストロボを使ったポートレートでは、背景と被写体の色味を分けて考えることが必要です。
フィルターを撮影してカラーシフトする
ホワイトバランスプリセットを登録しておくと、使いたいシーンですぐに呼び出すことができます。私はROGUEのグリーンフィルターを撮影してそれを基準のグレーにするようにプリセットを作り、マゼンタ寄りの色調を登録しています。呼び出すときはマニュアルホワイトバランスに設定。自分好みの色を登録しておけば必要なシーンですぐに呼び出せます。
1. グリーンフィルターを撮影する
2. WB設定の「MWB画像選択」を選ぶ
3. 撮影したグレー用紙を選択すると、グレーに
4. WBの設定をマニュアルにする
撮影するフィルターは「設定したい色と反対の色」を選ぶ
プリセットを作るのは、ケルビンの暖色(黄色系)から寒色(ブルー系)までの色の範囲に入らない、上の色相チャートのような色にしたいときです。プリセットは、作りたい色と反対側の色(補色)のフィルターを撮影して作ります。私がよく使っているのは、グリーンフィルターを撮影したマゼンタ寄りのプリセット。ウェディングの撮影などで、味気ない空をドラマチックなマゼンタの空にでき、とっても喜ばれます!
WB設定なし
WBプリセット
先に解説した、グリーンフィルターを撮影して作ったプリセットを使いました。左の写真はカメラのホワイトバランス設定の「オート」で撮影したもの。夕日の印象的な色合いを強調するために、グリーンフィルターのプリセットを呼び出してマニュアルホワイトバランスで撮影すると、背景がマゼンタ色になり、夕日の色合いが強調されました。
3000K
8000K
背景の色をケルビン指定で大きく変えたら、被写体の色も変わってしまいます。そこで、被写体の色を元に戻すために、ストロボにフィルターをつけます。3000Kくらいに下げたときは、オレンジフィルターを使います。反対にケルビンを8000Kくらいにして暖かい色合いにしたときは、ブルーフィルターで被写体の色を下げて戻します。ストロボの色は5700Kくらいの、昼間のケルビンになっています。
<玄光社の本>
クリックするとAmazonサイトにジャンプします。