「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第7回のテーマは「水面」。複雑に形を変える波紋や飛沫と、映り込んだ周囲の色をしっかりと写し込むことで、自分なりの表現ができる面白い被写体だと大村さんはいいます。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 水面を一面のキャンバスだと思って撮影してみよう。
2. 描写性能のよいレンズで絞り込んで撮るのがオススメ。
サイパンロケに行った時、夕焼けに照らされた海の中をスタッフさんが歩いている情景を撮影しました。強烈な夕日で黄色く染まった水面の色と、スタッフさんのシルエット、そこから広がる波紋のバランスが美しい! と思ったのでシャッターを切りました。波紋は隅々までクリアに写したい派なので、絞りはF16にしています。
好みの色を写しとる
わたしは、絵の具でキャンバス一面を塗りつぶしたような絵が好きです。水面は、写真でありながらそれに近いものを作り出せるので、大好きです。光や流れや反射や環境といった様々な条件の組み合わせで、水面は無数の「色」を見せてくれます。自分の心境や好みに合わせて、そのときどきの「色」を捉えるのが、水面撮影の醍醐味なのではないかと思っています。水面をキャンバスだと思って撮影してみると、なかなか面白いですよ。
シャープなレンズを
個人的には、水面の波紋や飛沫などが鮮明に写し出されているほうが、クリアで見ていて気持ちがよいと思っています。抽象的な画に仕上げたい場合を除いて、わたしはf11~f16くらいに絞りこんで撮ることが多いです。中途半端に絞るとモヤッとして、解像感が失われる感じが嫌なんです…。というわけで、絞り込んだ時にシャープな写りをするレンズを選択した方が、より美しい画を撮ることができるのでオススメです。描写に信頼のおける一本を使いましょう。
これは、ロケハンで多摩川の河川敷を歩いていた時に、ふと見た光景です。青いキャンバスの上に、浅瀬と鳥の大群が生み出す黒い色と、流れによってできた波の白い色が乗っていて、その三者のバランスがいいなと思ったので、シャッターを切りました。こちらも、水面の輝きなどを鮮明に描きたかったので、F11と被写界深度は深めにしています。
植物園で撮影をしていた時、池の水面をあめんぼがスイスイ移動していたので、気になって覗き込んでみました。近くにある植え込みの緑色と空の青色が混ざり合って水面に映り、小宇宙のような様相を呈していました。そんな「不思議空間を動き回るあめんぼ」は面白いなと思い、あめんぼがバランスの良い場所に来た時にシャッターを切りました。
お風呂に入浴剤を入れたら、意外なほどにピンク色に染まってかわいらしい感じだったのでシャッターを切りました。この時は女の子っぽい気分だったので、それにマッチしていたというのもあるかもしれません。水面に限らないのですが、いつでもカメラを持ち歩いていると、こういうシーンも見過ごさずに撮影できていいなあと思っています。