ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年
第3回

DJIドローン Inspire 2×Zenmuse X5S レンズ交換の魅力とは?レンズを交換して多彩な表現に挑戦する

個人・企業を問わず普及が進んでいるドローンは、低コストで空撮をしたい場合に採れる最も有効な手段です。いまやミュージックビデオや映画、TV番組の制作、調査研究など、幅広い用途で活用されていますが、ドローンを使って空撮を行うに際しては、映像の基礎はもちろん、適切な高度やアングルを選ぶ操作技術のほか、関連する法令や飛行可能な区域なども把握する必要があり、適正かつ安全に運用するためのハードルは依然として低くありません。

ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年」では、ドローンの構造から操作の基本、構図の作り方、飛行許可の申請にいたるまで、ドローンで空撮を行うにあたって必要な知識を幅広くカバー。プロユーザーの作例も収録しており、初めてドローンを扱う初心者にも理解しやすい一冊にまとまっています。

本記事ではチャプター3「プロから学ぶ空撮関連ノウハウ」より、レンズ交換式カメラを装備したドローンについて解説します。

>この連載の他の記事はこちら
>前回の記事はこちら

ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年

Inspire 2×Zenmuse X5S レンズ交換の魅力

Inspire 2のX5Sではマイクロフォーサーズ規格のレンズが使える。レンズが変わると映像がどう変わるのか? mm 数の異なるレンズを複数用意して比較してみた。

同じカメラでもレンズを変えると画角はもちろん画質そのものも変わってくる。カメラ愛好家の間ではこのレンズの描写の魅力に取り憑かれ、次から次へとレンズを購入し、その描写や持ち味を楽しむ人々もいる。美しい描写には一度ハマったら逃れられない魅力がある。「レンズ沼」と表現される所以だ。

レンズマウントにはキヤノンEFマウントやニコンFマウント、ソニーEマウントなど様々な形状があり、基本的にはそれに合ったレンズを装着する。Inspire 2ではX5Sを装着すればレンズ交換が楽しめる。マウントはパナソニックやオリンパスが採用するマイクロフォーサーズ規格。搭載できるレンズ重量には制限があるが、今回用意したレンズに関しては問題なく使用できた。

Inspire 2のフォーカスは通常のビデオカメラと異なり、常に被写体を追尾するようなものではない。アプリ上でタッチ操作でフォーカスは合わせられるものの、前後移動したり、動く被写体などを追尾するにはDJI FOCUS等のフォーカスコントローラーでマニュアル操作する必要がある。そうなるとドローンとカメラ操作は2体制で行うのが必須となってくる。

Zenmuse X5Sとは

ジンバル一体型カメラユニットZenmuse X5Sにはデジタル一眼用のレンズが装着できる。マウントはマイクロフォーサーズ規格を採用している。耐荷重は明らかにされていないが、マイクロフォーサーズレンズならばすべて装着できるわけではない。純正レンズ以外の対応レンズはメーカーWEBサイトで確認できる。

公式対応レンズはDJI MFT 15mm/1.7 ASPH、パナソニックLumix 15mm/1.7、Panasonic Lumix 14-42mm/3.5-5.6 HD、オリンパスM.Zuiko DIGITAL 12mm/2.0 、17mm/1.8、25mm/1.8 、45mm/1.8、 9-18mm/4.0-5.6。

公式対応レンズはDJI Focusでフォーカスをリモート操作できる

別売オプションのDJI Focus(15万円前後)とプロポの拡張端子から専用ケーブルと接続すると、フォーカスや露出、ズームなどをリモート操作できる。リモート操作に対応できるのは公式対応レンズのみ。DJI Focusを接続するとアプリに左のような表示やアイコンが表示される。

別売オプションのDJI Focus(15万円前後)とプロポの拡張端子から専用ケーブルと接続すると、フォーカスや露出、ズームなどをリモート操作できる。リモート操作に対応できるのは公式対応レンズのみ。DJI Focusを接続するとアプリに下のような表示が出る。

SAMYANG 7.5mm 1:3.5 UMC Fish-eye MFT(左)とLaowa7.5mm f/2 MFT(右)。2つは公式対応をしていないがX5Sに装着できた。ただし、DJI Focusでのリモート操作はできない。マニュアルフォーカスになるため、フォーカスは無限遠にして被写体との距離でフォーカスを合わせることになる。

レンズの基礎知識

焦点距離の長さで画角が変わる

焦点距離とはレンズ面から撮像素子(cmos)までの距離。mm数が短くなればなるほど広角に、mm数が長くなるほど望遠になる。よくカメラのスペックで「35mm判換算」という言葉を目にするが、これは35mmフルサイズ機で使用した場合には、どの程度の焦点距離になるのかを指す数値。

センサーサイズ

デジタル一眼や大判ビデオカメラで主に採用される撮像素子のサイズ比較。センサーの大きさで主に変わるのが画角。同じ焦点距離のレンズを使ってもセンサーサイズが違うと画角が異なる。

  • フルサイズ(36×24mm)
  • APS-C(23.4×16.7mm)
  • スーパー35mm相当(23.6×13.3mm)
  • マイクロフォーサーズ(17.3×13mm)

同じmm数のレンズでも撮像素子によって画角が異なる

35mmフルサイズの焦点距離を基準に、小数点以下を四捨五入して計算したもの。APS-Cはレンズに記載されたmm数の1.6倍(キヤノン)もしくは1.5倍(ニコン、ソニー)。マイクロフォーサーズは2倍にすると35mm判換算値が求められる。

 

標準レンズと望遠レンズを比べてみた

オリンパスの25mmは35mm判換算で50mmとなり、標準レンズと呼ばれる括りで肉眼に近い見た目の映像が撮れる焦点距離。45mmは35mm判換算で90mmとなり、中望遠と呼ばれる括りになる。望遠レンズでは背景が圧縮されて見えるため、被写体である人物と背景の遠近感が少なくなる。また、広角レンズよりも背景をぼかしやすいのもこうした望遠レンズの特徴。中望遠はポートレート撮影にも使われることが多い。

M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.8(50mm)

 

M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.8(90mm)

 

同じ超広角レンズでも歪みの表現に違いがあった

LAOWAとSAMYANGのレンズは同じ7.5mmでどちらも超広角レンズと呼ばれる部類。一般的に超広角になればなるほど歪みが大きくなるが、LAOWAは歪みが少ない。左のように遠近感を大きく付けた撮影でも使えるし、建物などあまり歪ませたくないシーンで活用できそうだ。LAOWAは46mmのフィルター径が備えられ、NDフィルターを装着できる。SAMYANGはいわゆる魚眼レンズで、大きく歪むものの、地球の丸さを表現してみたり、アクションカメラ風の映像になり、エフェクトとして映像のなかに盛り込んでみてもおもしろそうだ。

Laowa 7.5mm f/2 MFT(15mm)

 

SAMYANG 7.5mm 1:3.5 UMC Fish-eye MFT


ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年

関連記事