360度VR動画は、広視野角のレンズを備えた複数台のカメラによって、カメラを中心に前後左右と天地方向を記録した動画コンテンツです。近年においてはYouTubeやVimeoなどの動画投稿サイトやスマートフォンアプリなどで再生環境が整備され、エンターテイメント分野だけでなく、医療、観光、教育など幅広い領域での活用が始まっています。
視覚と聴覚によって空間を疑似体験できる新しいメディアとして注目が集まるVRですが、では実際に360度VR映像を制作するには、どのような機材や手順が必要なのでしょうか。「360度VR動画 メイキングワークフロー」(著・染瀬直人)では、撮影に必要な機材やソフトウェアをカバーしながら、360度VR動画の撮影から映像の合成、音声やテロップの編集、仕上げにいたるまで、一連の作業手順を網羅しています。
本記事では、Chapter1「360度VR動画の基礎知識」より、イベント会場や博物館などの施設に設置される大型VR上映装置と、映像に対して能動的に干渉できる装置を紹介します。
ドーム型シアターで集団で360度動画を鑑賞
VRゴーグルは基本的に1人で360度動画を視聴するものだが、大勢で360度動画を視聴できる施設が存在する。
このほか、世界初となる全天球型の映像施設「THEATER36○」(東京・国立科学博物館)は、直径12.8mのドーム内すべてがスクリーンとなっており、ドーム中央にあるブリッジから鑑賞し、映像に包まれるような体験ができる。また「コミュタン福島(福島県環境創造センター)」にも同様の全球型シアターが常設されている。
全国のプラネタリウムのような半球状ドーム型スクリーン施設でも、360度コンテンツがしばしば上映されている。愛知県蒲郡市にあるアミューズメント施設「ラグーナテンボス」の「360°3Dシアター」は直径16m、高さ6mの日本最大の円形3Dシアターで、人気アイドルの360度ミュージックビデオなどを上映している。
身振り手振りで360度VR動画を操る
360度VR 動画をよりインタラクティブなコンテンツとして体感できる方法として、Leap Motionのようなモーションセンサー装置を組み合わせるケースがある。
Leap Motionは、2012年に米Leap Motion社から発売された、ハンドジェスチャーでパソコンを操作できる入力デバイスだ。コントローラー本体をパソコンと接続し、赤外線LEDで照射された手や指の動きを赤外線カメラで撮影し、画像解析で手や指の位置情報を算出することで、マウスやキーボードを使うことなく、直感的な操作を実現する。GoPro VR Playerならば、このLeap Motionに対応しているので、360度VR動画を身振り手振りだけでコントロールすることが可能だ。
<玄光社の本>