360度VR動画 メイキングワークフロー
第6回

一般的な360度VR動画の視聴環境

360度VR動画は、広視野角のレンズを備えた複数台のカメラによって、カメラを中心に前後左右と天地方向を記録した動画コンテンツです。近年においてはYouTubeやVimeoなどの動画投稿サイトやスマートフォンアプリなどで再生環境が整備され、エンターテイメント分野だけでなく、医療、観光、教育など幅広い領域での活用が始まっています。

視覚と聴覚によって空間を疑似体験できる新しいメディアとして注目が集まるVRですが、では実際に360度VR映像を制作するには、どのような機材や手順が必要なのでしょうか。「360度VR動画 メイキングワークフロー」(著・染瀬直人)では、撮影に必要な機材やソフトウェアをカバーしながら、360度VR動画の撮影から映像の合成、音声やテロップの編集、仕上げにいたるまで、一連の作業手順を網羅しています。

本記事では、Chapter1「360度VR動画の基礎知識」より、360度VR映像を視聴できる環境のうち、個人で所有できる価格帯のデバイスやソフトウェアについておさらいします。

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Webブラウザーやスマホでも手軽に視聴できる

360度VR動画を視聴するには、実はパソコンやスマートフォンがあればいい。VRゴーグルのような専用の装置がなくても、再生することは可能だ。

現在、パソコンではChrome、FirefoxといったWebブラウザーの最新バージョンを使えば、YouTubeで360度VR動画を再生できる。Google Street Viewと同じ要領で、画面をドラッグして向きを変えることも可能だ。また、ジャイロセンサー搭載のスマートフォンやタブレットならば、最新版のYouTubeアプリで、コンテンツ再生時に端末を動かしたり、指で画面をスワイプしたりして視点を切り替えられる。

YouTubeの360度動画は、スマートフォン用のYouTubeアプリで視聴できる。スマートフォンの動きに合わせて360度動画の見え方も変わる。

また、空間音声に対応したYouTubeのコンテンツも、パソコンならば最新のChrome、Firefox、Opera、Edge、モバイル端末ならばAndroid 4.2以上のOSでYouTubeアプリを使えば、機能させることができる(ヘッドフォンの使用を推奨)。

FacebookやVimeoでも、基本的には最新のWebブラウザー、スマートフォンなら最新版のアプリを使うことで、360度VR動画を楽しめるようになっている。

一方、Webサービスではなく、パソコンに保存されている360度VR動画のファイルを再生するには、VLC Media Player、GOM Playerなどのフリーウェアを利用することになる。なお、GoPro VR Playerを使えば、最大8K/60fps(Cineform)で視聴することが可能で、リトルプラネットやフィッシュアイなどの投影変換もできる。

GoPro VR Playerは、ローカルにある360度VR動画ファイルを再生できる。サポートしている動画形式はH264、H265(またはHEVC)など。

簡易VRゴーグルで没入感を手軽に味わえる

手軽にVRならではの没入感を味わいたければ、Google Cardboardやハコスコのような簡易VRゴーグルがお勧めだ。組み立て式のボール紙にスマートフォンを装着し、スマートフォンの画面に映し出される映像をのぞくことで一気にVRの世界に入り込める。

Googleが提供する簡易VR ゴーグル「Google Cardboard」。専用アプリや YouTubeアプリで360度動画を手軽に体感できる。

その際、スマートフォンにはGoogle CardboardやYouTubeのアプリをインストールし、360度VR動画を再生する必要がある。二眼タイプの簡易ゴーグルならば、アプリの画面を左右に分割し、3Dで撮影したVRコンテンツを立体視で視聴できる。

2014年にGoogle Cardboardの規格が発表され、オープンソースで図面が公開されると、工作したり安価に入手できることから、VRの普及が進んだ。2017年2月のGoogleの発表では全世界で1000万個以上が出荷され、Cardboardアプリのダウンロード回数は1億6000万回に達したという。Google Cardboard対応の認定バッジのついたビューアーにはMilbox、SMARTvrなどがあり、HOMiDO Miniのよ
うにカードボードなしで、折り畳み式のグラスをスマートフォンに直接取り付けて視聴するタイプもある。

さらにGoogleは2016年5月、Cardboardとは別に、Android端末向けのVRプラットフォームとして「Daydream」を発表した。VRゴーグルと専用コントローラーをセットした「Daydream View」を2016年11月から発売している(2017年12月に日本国内でも発売が始まった)。

高性能なVRゴーグルで没入感をさらに高めていく

サムスン電子の「GearVR」は、ハイエンドVRゴーグルと簡易VRゴーグルの中間に位置する存在と言える。同社のスマートフォン「Galaxy」シリーズと組み合わせて使用するが、簡易タイプと異なる点は、ジャイロセンサーや加速度センサー、近接センサーをヘッドセット本体に内蔵し、顔の動きとの連動がスムーズだという点だ。

さらなる没入感を実現するハイエンドゴーグルは、高性能なヘッドトラッキングやポジショントラッキングにより、視聴者の動きを感知して、VR映像が連動する仕組みだ。内部に左目用、右目用のディスプレイパネルが備わっており、高解像度と広い視野角によって、高い没入感が得られる。

現在、ハイエンドゴーグルの代表格としては、Oculus RiftとHTC Viveが挙げられる。

ただし、これらのハイエンドゴーグルの使用には、「VR Ready」と呼ばれる高スペックのパソコンが必要だ。さらにパソコンにはケーブルで接続するため、取り回しや移動にも制限が発生する。

ハイエンドVRゴーグルの代表格、HTC Vive。ユーザーがVR空間を歩き回れる「6DoF」のトラッキングに対応している。

なお、VRゴーグル全般の課題としてはVR酔いがある。これは、レイテンシー(描画の遅延)や、フレームレート、リフレッシュレートなどが関係していると言われる。また、二眼タイプのゴーグルは、目への影響を鑑みて、13歳未満の子供の使用は非推奨とされていることがある。

 


<玄光社の本>

360度VR動画 メイキングワークフロー

著者プロフィール

著・染瀬 直人 編・エディトル


染瀬 直人(そめせ・なおと)

写真家、映像作家、360VR Content Creator

1964年生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。ハナエモリ・インターナショナル「流行通信」THE STUDIOを経てフリーランスに。コマーシャル、雑誌、ポートレート撮影などで活躍。近年は4K動画撮影を手がけるほか、360度VRパノラマ、360度VR動画、ギガピクセルイメージ、タイムラプス、シネマグラフなどの作品を発表し、静止画と動画の狭間における新表現に取り組む。2014年ソニーイメージングギャラリーで、個展「卜ーキョー・バーチャル・リアリティー」を開催。Autopano Video Proの公認アンバサダー。Kolor Academy認定エキスパート・トレーナー。YouTube Space Tokyo 360ビデオ・インストラクター。プ口フェッショナル・デジタルフォトを学ぶための勉強会「電塾」運営委員。VRなど新分野を考察するセミナ「VR未来塾」 主宰。IVRPA会員、VRコンソーシアム会員。

書籍(玄光社):
360度VR動画メイキングワークフロー

ウェブサイト:http://www.naotosomese.com/


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