日々目まぐるしく変化していく現代社会において、世界や国内の情勢を正しく見極めるために知っておきたい教養こそ「地理」「歴史」「公民(政治経済)」と感じている方も少なくないのではないでしょうか。
「オトナのための教養が身につく! 日本の地理・歴史・公民」では、スタディサプリの社会科講師を務める伊藤賀一が、義務教育課程の内容にプラスアルファした情報を分かりやすく解説。イラストや図版つきのオールカラーでしっかり学べる”教養書”となっています。これからの社会を生き抜く上で必須の知識を、「オトナ」だからこそ学び直したい時に役立つ一冊です。
最終回の本記事では、第二章の「歴史」から、もっとも記憶に新しい「コロナ禍と日本」についてご紹介していきます。
グローバル化と感染症の流行
これまでも人類は、細菌によるペスト・結核・コレラ・赤痢(せきり)、ウイルスによる天然痘・麻疹-ましん-(はしか)・水痘(水ぼうそう)・インフルエンザなどの感染症に悩まされてきました。 HIV(エイズウイルス)が引き起こすエイズやエボラ出血熱のように、新しいウイルス性感染症も登場しています。近年では、グローバル化が進んで移動が容易になったことで世界的な感染症の流行(パンデミック)が起きています。SARS(2003年)、新型インフルエンザ(2009年)、そして2019年末に始まった新型コロナウイルスの流行などです。
パンデミックにどう対峙したか
2019年末、中国の武漢で感染爆発が始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、またたく間に世界に広がりました。同ウイルスは感染力が強いため、先進諸国では外出を厳しく制限するロックダウン(都市封鎖)のような対策が行われましたが、経済に大きな打撃を与えます。 日本では、緊急事態宣言を中心とする比較的緩やかな対策によって経済との両立を図りました。日本は2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控えていましたが、2021年に延期して実施されました。
コロナ禍の新しい生活様式
パンデミック下の日本では、「三密(密接・密集・密閉)」を避けるなどの対策が呼びかけられました。インターネットが発達していたおかげで、対面をしないリモートワークやリモート飲み会などが行われました。また、食品のデリバリーサービスや、「置き配」によって配送員と客が対面しなくてすむ工夫なども普及しました。
withコロナ時代の新ルール
2023年7月現在、PCR検査やワクチン接種などが進んでおり、若年層などの重症化リスクは下がっています。 一方、高齢者や基礎疾患のある人の重症化リスクは高いままです。2023年5月には、新型コロナウイルス感染症の感染症法での分類が、「2類」から「5類」に引き下げられました。それにより、外出の自粛要請がなくなる、マスク着用者が減る、療養期間が短縮されるなどの変化があります。経済の停滞を防ぎつつ命を守るために、ウイルスとの共存を図る「withコロナ」政策への転換が図られています。