日々目まぐるしく変化していく現代社会において、世界や国内の情勢を正しく見極めるために知っておきたい教養こそ「地理」「歴史」「公民(政治経済)」と感じている方も少なくないのではないでしょうか。
「オトナのための教養が身につく! 日本の地理・歴史・公民」では、スタディサプリの社会科講師を務める伊藤賀一が、義務教育課程の内容にプラスアルファした情報を分かりやすく解説。イラストや図版つきのオールカラーでしっかり学べる”教養書”となっています。これからの社会を生き抜く上で必須の知識を、「オトナ」だからこそ学び直したい時に役立つ一冊です。
第九回の本記事では、第二章の「歴史」から、アメリカ同時多発テロをはじめとする世界とテロについてご紹介していきます。
アメリカ同時多発テロの発生
2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センタービル、ワシントンの国防総省(ペンタゴン)などが、ハイジャックされた飛行機による自爆突入を受け、3000人以上が死亡しました。 このアメリカ同時多発テロを起こしたのは、ウサマ=ビンラディン率いるイスラーム原理主義組織アルカイーダです。アルカイーダは、ソ連などの介入のため長い内戦が続いたアフガニスタンで勢力を伸ばし、アメリカに攻撃を加えたのです。この後、アフガニスタンのターリバーン政権がビンラディンらを匿ったことでアメリカなどの多国籍軍が攻撃し、アフガニスタン戦争となりました。
〈アメリカ同時多発テロで崩壊する世界貿易センタービル〉
COLUMN◼︎中東系=テロリストの映画界
同時多発テロの影響で、アメリカでは中東系移民やイスラーム教徒への憎悪が強まり、彼らに対する暴行や殺人、脅迫などの「憎悪犯罪」が相次ぎました。 「中東系=イスラム教徒=テロリスト」というステレオタイプの偏見が生まれ、例えば、中東系の俳優がテロリストのような悪役ばかり演じさせられる時期もありました。
地域紛争の頻発とアメリカ介入
2001年の米同時多発テロ事件ののち、アメリカのブッシュ(子)政権(共和党)は、アフガニスタンのターリバーン政権を攻撃し、2021年まで紛争が続きました(アフガニスタン戦争)。 また、2003年には、大量破壊兵器を所有しているとしてイラクを攻撃し、フセイン政権を崩壊させて2011年まで紛争が続きました(イラク戦争)。アメリカは権威を低下させ、次のオバマ政権(民主党)はイラクから撤退するなど、「世界の警察」の役割を降りる方針に転換しました。
確信犯的テロ集団・ISIL(イスラム国)
イラク戦争後にイラク国内が混迷し、2011年からシリアで内戦が始まったことで、両国を基盤とする過激派組織「ISIL(イスラム国)」が登場しました。 ISIL(略称IS)は、現在の国境を「西洋列強が勝手に決めたもの」として全否定し、自らをイスラーム教にもとづく「国家」と称しました。ISILは各地の支持者に戦いを呼びかけ、2015年のパリ同時多発テロなどを引き起こしました。 現在は全ての占領地を失い、事実上の壊滅状態となっています。