ホビージャパンエクストラ「模型展示会」特集
第2回

モデラーの技術と個性が光る模型展示会「テングモデラーズ」の軌跡

「自分なりのこだわりを持ち、納得いくまで作り込む」ことは模型を組み上げる醍醐味のひとつですが、近年においては、SNS上で「作った模型を見せる」ことによって、コミュニケーションツールとしての側面も持つようになりました。模型を作ることの意味が拡張されていく流れの中で、作った模型の実物を鑑賞しながら交流する動きも出てきています。その中の一つが「模型展示会」と呼ばれるイベントです。

ホビージャパンエクストラ2019 Winter」では、模型を楽しむ人々の交流の場として日本各地で開催している「模型展示会」を特集。展示会の取材記事から、全国の展示会開催カレンダーも掲載しており、プロ・アマチュア問わず参加する模型展示会の盛り上がりを伝えています。

本記事では、前回紹介した模型展示会「テングモデラーズ作品展」過去開催分(記事執筆時点で6回分)の記録を振り返って紹介します。

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ホビージャパンエクストラ2019 Winter

過去のテングモデラーズ作品展を振り返る

今回の特集で初めてテングモデラーズを知った方、また途中から訪れた方に向けて過去のテングモデラーズ作品展を一挙振り返っていきましょう!

第1回「飛行機モケイ」

記念すべき第1回のテーマは「飛行機模型」。東京は表参道にあるギャラリー「ラパン・エ・アロ」で催され、このときは12月ではなく10月開催でした。

ポスターに描かれていたイラストのフィギュアも展示

飛行機模型を普段作らない人も交えた作品には“ 普通”の飛行機模型作品が並んでいない個性豊かな物ばかり。開始当初はまばらだった来場者もたまたま通りかかった人なども会場に足を踏み入れて、最終的には大盛況の中幕を閉じたのでした。

展示されていた作品には単に実機に忠実に仕上げたものはなく、場面を切り取ったものや規模の大きいものなどさまざま。第1回からテングモデラーズの作品の方向性の片鱗は見えていた

第2回「車モケイ」

第2回から秋葉原にある学校をリノベーションしたイベントスペース「3331 Arts Chiyoda」に場所を移し、開催時期も12月に変更されました。テーマは「車モケイ」。第1回の飛行機模型と同じく車単品というよりはディオラマ仕立てや発光、映像などのギミックを盛り込んだものが多く、単品であったとしても超巨大といった規模の大きいものも展示されていました。

車模型の、というよりは車模型を使ってどういう作品に仕立てるかというのが色濃く見えた第2回

MAX渡辺氏の作品に乗っているのはfigma。全長約90cmと超巨大で一人では持てないほど
フクイ(限定)氏作のマジックミラー号というアプローチには衝撃を受けた人も多かった

第3回「船モケイ」

飛行機、車とくれば船ということで、第3回は船関係がテーマに。場所は前回に引き続き「3331 Arts Chiyoda」を会場に12月に開催されました。船模型といえば精密さを追求するのが主だったりしますが、展示作品は動きを取り入れたものが多く、また前後に長い形状ということもあって、ダイナミックな作品が特に多くみられた回となりました。

船の縮尺を利用したスケールの大きい作品も。上の写真は大森記詩氏の作品
“静”の展示のイメージが強い船模型だが、ディオラマ仕立てにして動きのある表現を取り入れているものが多かった

フクイ(限定)氏はゴムボートという大義名分でどこかでみたことあるプールを仕立てた

第4回「映画モケイ」

テーマをそれまでの模型ならではのジャンルからより幅広いものに変更。場所も変更され、東京は神田明神にある「神田明神 祭務所」というなんとも厳かな場所で催されました。

テーマの幅は広いものの、関連キットは多く展開されているのでテーマとしては比較的正統派。奇をてらうというよりは自分の好きな作品をどう見せるかというアプローチの工夫が作品に詰まっていました。

ひと目で何の映画をモチーフにしているのかが分かりやすい作品が多く、たとえ模型知識がない人でも楽しめる展示

竹下やすひろ氏のエグゼクター級スター・ドレッドノートは劇中での姿を思わせる超大型サイズに電飾も盛り込まれていた意欲作

第5回「日本モケイ」

前回の「映画モケイ」からさらに抽象的なテーマとなった「日本モケイ」。会場は第1回の表参道に程近い青山は「梅窓院(祖師堂)」という、場所もテーマに沿ったところに変更されました。

日本という広すぎるテーマから抽出された作品は、模型というよりもアートに近いアプローチのものが多く、これまでにない模型展示会の雰囲気を醸しだしていました。

主催者の清水氏曰く「作品数も少なかったし、人も少なかったけど、作品のクオリティはすごく高かった」という「日本モケイ」。テーマが広いからこそ製作者のボキャブラリーも問われ、どの作品も模型作品の枠を超えたものが多かった印象
ハタ氏の「琉金」はまさに模型で生み出したアートといった作品
そんな中フクイ氏はブレない作品を発表していた

第6回「漫画モケイ」

昨年開催された第6回。このときから会場が今年と同じ池袋の養老乃瀧研修センター にて行われ、ドリンク1杯サービスもスタートしました。

テーマは「漫画モケイ」。「日本モケイ」よりも具体的で、また「映画モケイ」よりも身近なテーマなので観覧者も気軽に楽しめる内容に。製作者の思い入れが強く作品に反映されていたのが印象的で、アプローチの仕方にもより工夫がされていました。

劇中の場面を切り取ったものや、作品のイメージを模型に落とし込んだものなど、バラエティに富んだ作品ラインナップ

あの原型師・智恵理氏が手がける『うる星やつら』のラムちゃんという、今後製品としてお目にかかることなんてあるのか分からない貴重な作品も展示されていた

ホビージャパンエクストラ2019 Winter

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