駆け出しクリエイターのための お金と確定申告Q&A
第3回

【駆け出しクリエイターのみなさん必読】源泉っていったい何なの?

「確定申告」は、国税である所得税を自ら計算して、税務署に届け出るための手続きです。「税金を正しく納めるための仕組み」であり、知っておくと便利ですが、いまいちよくわからない、と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A」(桑原清幸・著)では、税金の基礎や収入の区分、帳簿の付け方から節税のコツまで、確定申告にまつわる素朴な疑問について、ケースごとの事例を交えながら、詳しく解説しています。

本記事では「源泉徴収」「源泉所得税」に関するQ&Aを紹介します。

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Q.
デザイン事務所で働いています。空いた時間で、友達の会社のウェブデザインを手伝いました。報酬は5万円という話でしたが、会社宛に請求書を出すにあたり、源泉を引くよう指示されました。そもそも源泉っていったい何なのでしょうか? ぜんぜん意味がわかりません。

A.
源泉とは、正しくは「源泉徴収」という名称で、報酬が発生した時点で国が所得税を先取りするしくみのことです。

「源泉徴収」とは、文字どおり、(お金が生じる)みなもとから、(税金を)取るという意味です。例えて言えば、富士山の雪解け水が流れ出る源流までさかのぼって、おいしい水を汲むようなイメージですね。つまり、「源泉徴収」とは、税金を取りやすい最初の段階(報酬が発生した時点)で、国が先取りしてしまおうという制度なのです。

後払い、つまり、会社が報酬を全額払った後に、国が皆さんから税金を取ろうとしても、皆さんが全部使ってしまっていたら、国は取り損ねてしまいますね。源泉徴収制度は、国が皆さんから上手に税金を取るために考えたしくみで、取る側としては賢い方法といえます。

言いかえれば、本来あなたが「個人」として国に納めるべき所得税を、報酬を払う側の「会社」があらかじめ天引きして、あなたの代わりに国に納めるしくみをいいます。ちなみに会社が天引きした所得税のことを「源泉所得税」といいます。

「源泉徴収」するのは、会社の義務とされています。義務とされている以上、源泉徴収しないと「会社」が税務署からペナルティを受けます。一方で、あなたは報酬をもらう側なので、何もする必要はありません。あなたがもらう報酬(額面、総額)から、約1割が税金として天引きされて、残った約9割が手取りとして振り込まれるのです。

源泉徴収の税率は、正確には10.21%です。以前は10%でわかりやすかったのですが、東日本大震災の後から「復興特別所得税」として、0.21%が追加で徴収されています(平成49年まで)。なお、同じ人に対して1回に支払われる報酬が100万円を超えると、100万円を超えた部分については20.42%と税率が2倍となります。100万円を超えるような高額な報酬をもらったときは、高い税率で天引きされることを覚えておきましょう。

 


<玄光社の本>

 

<著者の新刊>

本書の著者・桑原清幸さんの新刊「駆け出しクリエイターのためのお金と独立準備Q&A」が10月29日に発売されます。本書と併せて、独立後の仕事とお金の管理に、是非お役立てください。


著者プロフィール

桑原清幸

(くわばら・きよゆき)
1972年群馬県渋川市生まれ。桑原清幸会計事務所代表。税理士・公認会計士。上智大学在学中に公認会計士試験に合格。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。大手会計事務所で20年間勤務したのち、独立開業。会計事務所とアートを融合したギャラリーKKAG(Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery)を設立。植田正治やソール・ライターなど写真を中心とした展覧会の企画制作を手掛ける株式会社コンタクトの財務担当取締役(CFO)を務める。暗室バーの税務顧問も務めるなど、会計専門家の立場からアートビジネスの発展を支えている。趣味は、ライカカメラ収集・写真の暗室作業の他、秘湯スタンプ集め、日本酒立ち飲み屋巡りなど。上智大学経済学部非常勤講師。

ウェブサイト:kkag.jp

書籍(玄光社):
駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A
駆け出しクリエイターのためのお金と独立準備Q&A

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