オールドレンズ・ライフ
第12回

魅力的な二面性を持つ「ザ・クセ玉」 Biotar 75mm F1.5

かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、スマートフォンで写真を撮るのが当たり前になった近年においても、カメラ好き、写真好きの人々から「オールドレンズ」と呼ばれ親しまれています。オールドレンズは「マウントアダプター」と呼ばれるパーツを用いることで現行のカメラに装着することができますが、これまでに発売された膨大な数の交換レンズの中から、自分好みのレンズを見つけるのも、オールドレンズ遊びの楽しみの一つです。

オールドレンズ・ライフ 2018-2019」においては、数あるオールドレンズの中でも性能面で個性が際立つ「中望遠オールドレンズ」を特集。正統派レンズからクセ玉まで、バラエティ豊かなキャラクターのレンズたちを作例とともに紹介しています。本記事では、「Biotar 75mm F1.5」の作例と解説を抜粋して掲載します。

>この連載の他の記事はこちら
>前回の記事はこちら

オールドレンズ・ライフ 2018-2019

ぐるぐるボケは一側面に過ぎない Carl Zeiss Jena「Biotar 75mm F1.5」

α7III + Biotar 75mm F1.5 絞り優先AE F2 1/60秒 - 0.7EV ISO1000 AWB RAW 中程のビルにピントを合わせる。遠距離撮影でも大きなボケは健在だ。ハイライトからシャドウまで階調が実に豊かだ。

ビオター75mm F1.5はクセ玉として定評がある。いわゆる大口径ポートレートレンズで、ぐるぐるボケの出やすいレンズとして有名だ。特にシネレンズブーム以前は、クセ玉の親分のような位置付けだった。

しかしながら、昨今のオールドレンズファンはシネレンズの強烈なクセに慣れている。そうした経験からすると、たしかにぐるぐるボケは発生するが、特に騒ぎ立てるほどのことではない、というのが実際のところだろう。

無論、これには理由がある。実はこのレンズ、一般的なポートレート撮影の距離では、あまりぐるぐるボケが出ないのだ。いわゆるバストショットを撮っている分には、中心部のシャープさ、豊かなボケ、そしてやさしいコントラストが相まって、むしろ高描写タイプのレンズに思えてくる。仮にも戦後のひと時代を支えた中望遠レンズだ。堅実な描写にも注目してほしい。

Biotar 75mm F1.5 中古価格:100,000~150,000円 Carl Zeiss Jena Exakta mount 1938年に登場し、戦後の一眼レフ用中望遠レンズの代表格だった。4群6枚のダブルガウス型。大口径タイプでぐるぐるボケが発生しやすい。

character notes

描写力:★★★★
ク セ:★★★★
機動性:★★
コスパ:★

ぐるぐるボケで有名なポートレートレンズだが、基本的な描写力もかなりの高水準だ。

KF-EXAE 税別価格:4,000円 エキザクタマウントのレンズを、ソニーEマウントボディに装着する。マウント面のロックレバーで、レンズの着脱が可能だ。

オールドレンズ・ライフ 2018-2019

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

関連記事