【BOOKS REVIEW】「MAINTENANCE」「DesignScape 新しい風景のかたち」など、フォトテクニックデジタル編集部オススメの本



MAINTENANCE
著:マーク・パワー、東京都交通局
発行:青幻舎/定価:3.800円+税

世界的な写真家集団マグナム・フォトに所属する写真家マーク・パワー氏が、東京の交通インフラを支える都営交通の「整備現場」を密着取材した異色の写真集が発売中だ。東京都交通局が情報発信プロジェクトの一環として企画したもので、写真撮影・取材に全面協力している。車両点検場やターミナルなど、地下鉄・バス・トラムそれぞれのバックヤードにフォーカスを当てた。 マーク氏はこれまでも、イギリスのミレニアム・ドームの建設風景をはじめ、世界の様々なバックヤードを撮影してきた。そんな彼の目に、日本の鉄道やバスの整備現場はどのように映るのか? 撮影について、マーク氏は「この現場は小宇宙のようでした。そこに一つの世界ができあがっている感じがしました」と振り返る。その空間は、本書の写真を見るとわかるのだが、彼の言葉の通り異様に美しい。様々な作業が行われる場所でありながら、小さな工具から車両まで、あらゆるものが整然と並んでいるのだ。美しいものがあるのではなく、美しく使われているものが美しい。そこには日本人の「用の美」が存在している。首都圏3,000万人の移動を支える都営交通の裏側を覗いてみよう。
→『MAINTENANCE』


 

My Room 天井から覗く世界のリアル
著:ジョン・サックレー
発行:ライツ社/定価:2,800円+税

世界55ヵ国1,200人のベッドルームを写したドキュメンタリー写真集が生まれた。作者は、ソニーやコカ・コーラといった世界的企業などのCM制作も手掛ける写真家・映画監督のジョン・サックレー氏だ。彼は6年間にわたり、世界中の18歳〜30歳のベッドルームを訪ねて回った。写真はどれも、部屋の真ん中にいる部屋主が天井に吊るされたカメラを見上げるという同じアングルで撮られている。天井から覗く景色は、世界の「違い」をあぶりだす。
→『My Room 天井から覗く世界のリアル』


 

17(SASEBO PROJECT)
著:松尾修
発行:日販IPS/定価:6,000円+税


佐世保出身の写真家・松尾修氏による出版プロジェクト「サセボプロジェクト」の4冊目が発売となった。軍港として、また造船の街として発展してきた街、佐世保の異質性を探求していくシリーズ。本作では、2017年に佐世保の街で出会った17歳の少年少女たちを、白黒フィルムで捉えた。山と海に隠されたノスタルジックな風景の中で撮られた若者たちは、時代を飛び越え普遍的な存在として写されている。見る者に不思議な感覚を与えるポートレート集。
→『17(SASEBO PROJECT)』


 

山熊田
著:亀山亮
発行:夕書房/定価:2,800円+税

戦場の写真で知られる写真家・亀山亮氏の新作写真集は、人口50人足らずの小さな集落、新潟県村上市山熊田に生きる人々に焦点を当てたドキュメンタリーだ。新潟と山形の県境に位置するこの集落にあるものは、山と熊と田だけ。巻狩による熊狩り、闇夜の山焼き、梅雨時のシナ剥ぎ、一面の雪景色──。その光景は、日本で遥か昔から続けられて来た「生と死」をめぐる原初の生業として、亀山氏を強く惹きつけた。モノクロ写真で光と闇、生と死を鮮烈に描く。
→『山熊田』


 

奇岩の世界
著:山田英春
発行:創元社/定価:2,800円+税

世界各地に存在する、奇妙な形の岩“奇岩”。映画ロケ地になることも多い岩々は、どうしてそんな形になったのか?いつから存在しているのか?と想像力を掻き立てられる。本書には、世界五大陸から厳選した奇岩の写真が180点収録されている。「砂漠の彫刻、天空の彫刻」「異星の谷、失われた都市」「驚異のバランス」「岩に住む、岩に眠る」「魔の山、神々の庭」という5章で奇岩の魅力をたっぷりと紹介する。「世界の奇岩地図」付きで、旅に出たくなる一冊だ。
→『奇岩の世界』


 

DesignScape 新しい風景のかたち
著:林明輝
発行:天夢人/定価:本体3,700円+税

日本の絶景を求めて年間200日以上、各地を旅する風景写真家の林明輝氏による、新しいコンセプトの風景写真集だ。「在る風景を撮る」のではなく、自身の心の中でデザインされた風景を作品化するため、ドローン写真や水中写真、高性能のミラーレスカメラなどを駆使。さらに、原則、見開きの2点を対にした構成とすることで、左右の作品が呼応する表現を追求した。カラー作品96点を収録、巻末には詳細な作品解説と撮影データも掲載されている。

→『DesignScape 新しい風景のかたち』



キャバレー、ダンスホール 20世紀の夜
写真:今井晶子、奥川純一、西村依莉
発行:グラフィック社/定価:1,800円+税

キャバレーやダンスホールといった各地に残る昭和の歓楽遺産の今を一冊にまとめた写真集が発売中だ。耐震性の問題やオリンピックによる新規開発事業に押され、こうしたナイトスポットは現在、失われつつある。本書には今も営業を続ける古き良き15軒の写真を掲載。非日常空間の魅力を伝える。戦後から最盛期を経て現在まで生き残ってきた各店の逸話のほか、「キャバレーのマッチ」「新世紀ミュージックガイド」といったコラムも収録。
→『キャバレー、ダンスホール 20世紀の夜』

 

フォトテクニックデジタル 2018年5月号
「フォトテクニックデジタル2018年5月号」

 

関連記事