食べかけのたい焼きやカップに注がれるコーヒー、指につままれて変形した豆大福、溶けてつながったトーストのチーズ……。一見本物にしか見えない食べ物の木彫り作品をSNSやTVで見かけたことはありませんか。
木彫りアーティスト、キボリノコンノさんの作品集「キボリノコンノ作品集 キボリアル」では、朝食メニューやお菓子をモチーフとした作品の写真とその製作工程を紹介。パッと見で食べ物そのものの木彫り作品を楽しむとともに、食べ物の持つ柔らかさや瑞々しさを、木彫りという手段でどのようにして表現しているのかをも合わせて知ることができる一冊となっています。
本記事ではChapter1「KIBORINO SWEETS」より、「カステラ」をモチーフとした木彫り作品を紹介します。
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カステラになりたい木の気持ち
メイキング
生地の気泡をひとつひとつミニルーターで彫刻
上面に丸みをつけて、カステラの柔らかさを表現
ザラメを着色で表現
木目の質感を残して着色
角材がカステラに……変化の瞬間を固定する
アトリエに転がっていた木の角材が、カットする前のカステラの棒のように見えてきて、もし「木が自らカステラになりたいと願ったとしたら」どんな風にカステラになっていくのだろうと想像して作ったのがこの作品です。
硬い角材が、柔らかそうに少しずつ自ら剥がれていく様子は、彫刻刀で丁寧に彫り上げ、滑らかさを感じるまで紙やすりで磨いて仕上げました。
Point of Making
1
まずは作品の構想を紙に描いていく。大きなカステラから切り出された個体と、まさに剥がれていく途中のもの。
2
丸ノコ板という木材を切断する工具で、小さなカステラとなる個体を切り落としていく。
3
大きな塊のカステラから剥がれようとしている部分を鉛筆でマークし、彫刻刀で切削していく。
4
重力を表現するために、剥がれていくカステラには彫刻刀やベルトサンダーでカーブをつけていく。
5
切り出されたバラバラのカステラにはミニルーターで凹凸をほどこし、空気を含んだ生地のフワフワしたテクスチャーを出す。
6
木材用のオイルと下地材を塗って乾燥させたら、アクリル絵の具を使って着色していく。
7
スポンジ部分の凹凸や、焦げ目とスポンジの隙間部分などの細かい部分にも木の白さがあらわれないように色を入れる。
8
上面は木の質感が残るように薄く着色して、しっとり感を出したら完成。
【告知】
2023年11月20日(月)まで、大阪・大丸梅田店において、出版記念イベント「キボリノコンノ展」を開催します。
本連載で紹介する作品の実物も展示されますので、是非お越しください。
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