あなたは「いい写真」と聞いてどのような写真を想像するでしょうか。人によってその定義はそれぞれです。なかなか思った通りには転ばない偶発性も写真撮影の面白さですが、結果的には「撮影者の伝えたい事柄がしっかり伝わる」写真が「いい写真」といえるのもかもしれません。
「いい写真を撮る100の方法」では、スナップ写真を中心とした100点の写真について、撮影意図や撮影時のエピソードを交えながら、表現力を鍛える視点や思考法について解説。撮影者として他者に自身の感動やその場の空気感、興味の対象を伝える写真表現に向き合う姿勢を学べる内容にまとまっています。
本記事では第3章「カメラの使い方、レンズの選び方」より、いまあえてレンズ交換式カメラを使う理由についての考察を紹介します。
いいカメラやレンズの必要性を考えてみる
本連載を読んでいる方は、おそらくそこそこの性能を持ったカメラをお使いだと思う。カメラを持っていないけど読んでいますという方は、今すぐカメラを買ってください。こんなに厚くて文字の多い本を読んで内容を実践しないのは損です。
たしかに今はスマホでも綺麗な写真を撮ることができる。よく世間話の中で「写真はスマホで十分」「スマホの方が綺麗に撮れる」という声を聞く。スマホで撮った写真は、その端末上で表示するぶんにはたしかに美しい。しかしプリンターで印刷したり、Webに大きなサイズで載せると精細感やディテールが乏しい……なんて一般人に主張しても、面倒臭い男だと思われるのがオチだ。僕は写真家としての矜持を背中に隠して「そうですね」と相槌を打つ。
カメラとスマホ(のカメラ機能)の画質が違う理由は、光を受け止めるセンサーの面積にある。光を雨水に置き換えると分かりやすいが、雨水を貯めるのにバケツを使うのがレンズ交換式カメラ。対してコップを使うのがスマホだ。カメラの画素数はこのバケツやコップの数にあたる。両者を同じ数だけ用意しても、貯められる水の量は全然違うというわけだ。
そして僕が何より思うのは、スマホよりカメラの方が自分の意思や意図を簡単に反映できるということ。結局のところ、写真を撮るならスマホよりカメラの方が手っ取り早いのである。職業カメラマンが高価なカメラを購入するのも、作業効率が高いからだ。事実、主要カメラメーカーの最高級機はあらゆる操作を素早くこなすことができる。一方で精度や性能も高く、カメラ任せでも驚くほど失敗しにくい。だから予算さえあれば、初心者こそハイスペックな高級機をオススメしたい。
これがスマホの内蔵カメラになると、難しいことはお任せ下さいというのが基本姿勢。便利ではあるが、撮りたいように撮れるかは別の話だ。僕個人は仕事ならレンズの小ささを生かして狭い隙間を撮るとか、私事ならあえて安っぽく写すとか、カメラでは写りにくいものをスマホで撮っている。この安っぽく写すという点には魅力を感じていて、いつか安っぽい写真ばかりの展示をやってみたいと思っている。アリですよね?