映像作品などで目にする「画面」の雰囲気は、色合いや明るさなどいくつかの要素によって演出されます。普段何気なく観ている映像作品も、よくよく見てみると登場人物の心理状態や物語の展開によって色合いが調整されていることがわかるでしょう。こうした画面の調整を一般に「グレーディング」といいます。
RAW現像ソフトなどに搭載されている「カラーグレーディング」機能は、元々映像の分野で用いられてきたグレーディングの手法を写真表現に活かす目的で取り入れられたものです。使いこなせば、写真に映画のワンカットのような雰囲気を加えることが可能になります。
「Lightroom カラーグレーディング活用BOOK」では、写真家の藤田一咲氏が、写真のカラーグレーディングを行う上で押さえておくべき色の基礎からシーンごとの作例、簡単に試せるパラメータ設定集など、写真表現の幅を拡げる知識やテクニックを多数掲載しています。
本記事ではChapter2「日常や旅先の写真の雰囲気を変える -スナップ」より、いわゆる「銀残し」のような渋い色合いに調整する方法を紹介します。
わずかな色合いが効果的/モノトーンのブリーチバイパス
モノクロのような静謐な味わい
モノトーンには単調な、という意味があります。ここではブリーチバイパス(銀残し)の手法を使い、写真の彩度を大きく落とし、さらにコントラストを強くし、中間調の調整を行わずに、モノクロのような静謐な味わいの色調で表現します。
Before
撮影データ:絞り F4.2 シャッター速度 1/80秒 ISO 200 WB 晴 カメラ FUJIFILM X-T4 レンズ XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR
After
- カラーグレーディング
- シャドウ 色相:175/彩度:20/輝度:0
- 中間調 色相:0/彩度:0/輝度:0
- ハイライト 色相:80/彩度:15/輝度:0
- ブレンド 50
- バランス +70
- 全体 色相:0/彩度:0/輝度:0
#10 BLEACH BYPASS-MONO
1. 基本補正を行う
POINT:コントラストを下げる
彩度の設定値を大きく下げて、モノトーンに近づける
[基本補正]パネルを開き、以下のように設定する
- 色表現 カラー
- プロファイル Adobe 標準
- WB 色温度:5,200 *適切な色温度に補正する
- 露光量 -1.10
- コントラスト -70
- ハイライト +10
- シャドウ -60
- 白レベル 0
- 黒レベル -5
- 明瞭度 +45
- 自然の彩度 +15 *仕上げ時に調整
- 彩度 -70 *下げ過ぎに注意する
2. トーンカーブを調整する
POINT:白飛び、黒つぶれを抑える
[トーンカーブ]パネルを開く
●ポイントカーブ
左図のようにトーンカーブを
調整する
A: 入力:0/出力:20
B: 入力:255/出力:240
3. カラーグレーディングを行う
POINT:メインカラーはハイライトのグリーン
色を抑えるために中間調は使用しない。シャドウ、ハイライトも彩度は低めに抑える
[カラーグレーディング]パネルを開く。それぞれのエリアの[詳細]パネルを選択し、以下のように設定する
*図は各エリアの色相の位置関係をわかりやすくするために[三方向]パネルになっている
- シャドウ 色相:175/彩度:20/輝度:0
- 中間調 調整なし
- ハイライト 色相:80/彩度:15/輝度:0
- ブレンド 50
- バランス +70
- 全体 調整なし
4. 効果を加える
POINT:周辺を暗くして画像を引き締める
[効果]パネルを開き、★以下のように設定する
●切り抜き後の周辺光量補正
スタイル: ハイライト優先/適用量:-10/中心点:50/丸み:0/ぼかし:50/ハイライト:0
5. さらに効果を加える
POINT:さらに周囲を暗く落とし、画面を引き締める
[ツールストリップ]パネルを開く。
[段階フィルター]を選択し、下図のように[段階フィルター]を2ヵ所かけて、以下のように設定する
- 露光量:-1.70 ●ハイライト:-60
- ハイライト:-50
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