「光の魔術師イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック」は、タイトルの通り、人物撮影時におけるラインティングテクニックを指南する主旨の書籍です。本書ではストロボライティングの基本と、後幕シンクロやマルチ発光などの応用技術をカバーしていますが、このほかにもストロボの基本を学ぶ前段階として、自然光を活用した撮り方も解説しているのが特徴となっています。
本記事では、チャプター1「撮影を始める前に知っておきたい基本」より、「光と色を知る」のページから特に重要なポイントを抜粋してご紹介します。
自然光もストロボも光の考え方は同じ
光の選び方と使い方を知れば、どんな状況でも自分らしい写真を撮ることができます。最初はストロボを使うのは難しいのでは?と感じるかもしれませんが、4つの光(レイヤー)を考えながら光を作れば、難しいことはありません。自然光でもストロボ光でも、自由自在に操ることができます。
4つの方向からの光を組み合わせて自由にライティングする
私が作品を撮るとき、おもに4つの方向からの光を意識しています。
1. 被写体の前方からくる光
2. 被写体の後方からくる
3. 被写体の真後ろからくる光
4. 背景を照らす光です。
この4つの光を1つだけ使うこともあれば、2つか3つを組み合わせて使うこともあります。いくつも重ねられるので、「レイヤー」と呼んでいます。光の種類は自然光もあれば、ストロボ光もあります。あるいはその場にある光、たとえば夜に自動販売機やお店のウィンドウの光を使うこともあります。
じつは、4つのレイヤーのほかに、もう1つ光があります。それは、被写体の真正面からの光、「0」レイヤーです。これはストロボをカメラに装着した状態の光。カメラと同じ方向からの光はおもしろくないので、私はほとんど使いません。カメラからストロボを離すことで、被写体に立体感が生まれます。
レイヤー1:被写体の前方から光を当てる
夕暮れのポートレートで、日没後に少し空の色が残っているときなど、レイヤー1の光を当てて夕焼け色を残しつつ被写体を浮き上がらせたりします。
レイヤー2:被写体の後方から光を当てる
体のラインを見せたいときなどは、レイヤー2で被写体の後ろからの光を使います。ダンスを撮るときなど、よくこの光を使います。
レイヤー3:被写体の真後ろから光を当てる
雨ポートレートで欠かせないのが、被写体の真後ろから光を当てるレイヤー3。この写真はバックライト1灯のみで、RAW現像で被写体を少し明るく起こしています。
レイヤー4:背景に光を当てる
枝の模様が描かれたフィルターをライトブラスターに挟み、被写体の後ろから背景にバックライトを照らした例です。幻想的な背景を自由に作ることができます。
レイヤー0を例外的に入れるシーンとは?
レイヤー0は使わないと言いましたが、じつは1つだけ使うシーンがあるんです。それはアップでキャッチライトを入れるとき。カメラを向いた瞳の中にストロボをキャッチライトとして映り込ませるには、カメラと同じ方向ら光を当てる必要があります。キャッチライトの入れ方については、また別の機会に解説しますね。
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