大村祐里子の身近なものの撮り方辞典
第47回

画面のブレはむしろ味。景色の変化と疾走感を楽しむ「ハイウェイ」の撮影

ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。

「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第47回のテーマは「ハイウェイ」です。

大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。

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身近なものの撮り方辞典

撮影のポイント

1. 狙い目は夜の撮影。
2. ブレはむしろ味になる。
3. ホワイトバランスの設定は大胆に。

富士フイルムFUJIFILM X-100T f2 1/50秒 ISO800 WB:マニュアル RAW

ハイウェイによくある街灯の下を通った瞬間にシャッターを切りました。真下を通るタイミングを狙うと、ライトが「カッ!」と明るくなる様子を撮れて楽しいです。思いっきり逆光にするのがおすすめです。

都会の高速道路の車窓が面白い

ハイウェイの写真を撮るのが大好きです。高速道路は、日常では体験できないようなスピード感があって、いつも楽しいです。特に都会の高速道路は景色がどんどん移り変わっていくので、何度通ってもワクワクします。そのワクワク感を、写真に収めていったらよいのではないかと思います。あ、もちろん自分が運転している時は危険なので撮影してはダメですよ。運転手以外のポジションの時にしましょう。車内ではシャッター音が意外とうるさいのでミラーレスカメラが推奨です。

街灯の下を通過した瞬間を狙え

夜の道の方が、様々なライトの色や雰囲気が際立つので、暗くなってからの撮影がおすすめです。街灯の下を通過した瞬間がシャッターチャンスです。レンズは広角~超広角の方が、動きのある絵が撮れます。私は、あえてシャッタースピードは遅くするのが好きです。ちょっとぶれているくらいの方が、ハイウェイを飛ばす「びゅんびゅん感」が出てスリリングです。ホワイトバランスは極端に暖色側か寒色側に振ると、インパクトのある仕上がりになります。

富士フイルムFUJIFILM X-100T f2 1/8秒 ISO800 WB:マニュアル RAW

スカイツリーの近くを通過した時の一枚です。夜でしたが、雲が出ていて妖しい感じがしました。その雰囲気を強調するためにホワイトバランスは大胆に寒色側に振ってみました。

キヤノンEOS 5D Mark IV Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZE f8 1/50秒 ISO200 WB:マニュアル RAW

トンネルの中もシャッターチャンスです。出口を消失点として構図をつくると、パースの効いた絵になって面白いです。この日は雨が降っていたので、フロントガラスについた水滴が散らしたラメのようできれいでした。ホワイトバランスは寒色か暖色、思い切ってどちらかに振り切るとインパクトのある一枚になります。私は暖色側が好きです。

富士フイルムFUJIFILM X-100T f2 1/13秒 ISO800 WB:マニュアル RAW

シャッタースピードを遅くすると、街灯や車のテールランプがぶれて疾走感のある一枚に仕上がります。私は1秒よりも少し速いくらいのブレ加減が好きです。好みのシャッタースピードを探すのも、また一興です。


身近なものの撮り方辞典

著者プロフィール

大村 祐里子


(おおむら・ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。著書「フィルムカメラ・スタートブック」、「身近なものの撮り方辞典100

ウェブサイト:YURIKO OMURA
ブログ:シャッターガール
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