撮影した写真を他者に見せる目的は様々です。ただ記録として見せるならば「撮って出し」でも十分ですが、そこに撮影者が持った感情や、直接関係ないなんらかの意味合いを乗せたいと考えたとき、それはたとえ最終的に何も手を加えなかったとしても、表現を試みたことにほかなりません。
画面の色合いは写真や映像の印象を一変させます。例えば映画の画面をよく見てみると、シーンによっては現実の風景とはかけ離れた色合いで表現されていることに気づくでしょう。こうした映画的なカラー表現は、しばしば写真の調整でも用いられます。
「シネマティック・フォトの撮り方」では、写真に映画的な演出を加えることを大前提に、撮影時に留意すべきポイントや編集方法、鑑賞する際の心構えも解説。著者の上田晃司さんは写真と映像の両方で作品の撮影を続けており、静止画の画作り解説を主たるテーマに据えた本書の製作においても、映像製作の考え方を採用しています。
本記事ではChapter2「シネマティック・フォトの撮り方」より、夕景をドラマチックに仕上げた作例の解説を抜粋して掲載します。
夕景の光芒を舞うシルエットのカモメ
CINEMATIC IMAGE
北海道の海辺で、夕方漁師が港に戻ってくるのをカモメが空から狙っている。さらに曇り空の隙間から太陽の光が漏れて光芒が発生し、シルエットになったカモメがとてもドラマチックだ。洋画にも邦画にもありそうなシーンだ。
SITUATION:シルエットにしても形が明確な鳥はシネマティックなイメージの立役者
スナップでも風景でも、鳥はシネマティックなイメージを演出してくれる。シルエットでも鳥だということが一目で分かるので、アクセントにしやすい。この写真は夕方にオレンジに染まる空のダイナミックさと、主題であるカモメの群れを狙った。ポイントはカモメのシルエットをいかに綺麗に捉えるかだ。カモメがたくさんいる場合は高速連写でベストなタイミングを狙うと良いだろう。シャッター速度はカモメがシャープに止まる1/1300秒にしている。
COMPOSITION:黒を引き締めることで光芒の中のカモメが際立つ
主題はドラマチックな空を飛ぶカモメだ。海は入れずに、120mm相当の望遠を使ってカモメを中心に風景の一部を切り取った。画像下の黒い部分は防波堤。シルエットにすることで黒が締まる。空の暗い部分と防波堤が暗くなることで光芒が際立ち、その中を飛ぶカモメのシルエットに視線がいく。
- 複数のカモメが飛んでいるのでパターン的な構図になる。
- 周辺が暗いことで中央のカモメのシルエットが際立つ。
CINEMATIC RULE:光芒は絞りを少し絞って光の筋を出す
ドラマチックさを際立たせているのは光芒の存在だ。光芒は湿度が高く雲の隙間から太陽光が降り注がないと、なかなかはっきりとした形として現れない。露出をアンダーにして絞りを少し絞り、光の筋をシャープに撮るとドラマチックな表情を見せる。この写真では、絞りはF8に絞っている。
玄光社オンラインストアにおいて、著者の上田晃司さんが作成したCUBE形式のLUTファイルを販売中です。本連載を参考にシネマティック・フォトを試してみたいとお考えでしたら、ぜひ購入をご検討下さい。