ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第45回のテーマは「ライブハウス」です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. ライティングが目まぐるしく変わるので、撮り逃さないように集中する。
2. ミラーレス機でサイレントモードに設定。
客が入る前の座席です。メタリックな材質の椅子が、リハーサル中の青と黄色のライトに照らされ光っている様子が気になったので撮影しました。一見何を撮ったのかわからない感じが気に入っています。ライブハウスでは光る素材がたくさんあるので、よく観察してみましょう。
撮り逃さないように常に神経集中
ライブハウスの面白いところは、様々な色のライトで場内が照らされることです。また、そのライトもスポットだったり、ミラーボールのように動きのあるものだったり、たくさんのバリエーションがあります。短時間のあいだにこんなに雰囲気の変わる場所はなかなかないので、ライブハウスはカメラマンにとって最高の撮影場所だと私は思っています。ライトの色やタイプで、場所の雰囲気もガラリと変わりますので、撮り逃がさないように常に神経を集中させましょう。
周囲の邪魔にならないよう注意
真っ暗な中、強いライトで被写体が照らされるので、必然的に「輝度差」の大きいものを撮影することになります。私は明るいところに露出を合わせ、暗いところは思いっきり暗くしてしまう方が格好よくて好きです。あとは、演奏中に撮影可能な場合は、ほかのお客さんの迷惑にならないよう、ミラーレス機を使い、かつシャッター音の出ない「サイレントモード」で撮影しましょう。一眼レフ機はミラーがあるので完全サイレントにはできません。
飲食可能なライブハウスで、目の前のグラスと、後ろで妖しげに光るライトを切り取りました。紫、オレンジ、緑、青、という、普段なかなかお目にかかれない色のライトを見つけると嬉しくなります。そして「今度こういう色の組み合わせでライティングしてみよう」という“気づき”にもなります。
ふと上を見上げると、青いミラーボールが光りながら、くるくる回る様子がきれいだったので、シャッターを切りました。ライブハウスには、ステージだけではなく、それ以外の部分にもフォトジェニックなパーツがたくさん隠れています。えっ、そんなところを撮るの? と言われそうな、自分の視点で切り取ったライブハウス写真を追求するのも楽しみのひとつです。
赤いライトは、目の前の光景をとてもドラマチックにしてくれます。リハーサル時、立てかけてあったベースの背後から強い赤いライトが照射されていました。このベースの持ち主は一体どうなってしまったのだろう?(実際はどうにもなってないのですが)と妄想が膨らみます。