人物が和服を着用した姿のことを一般に「和装」と呼びます。和服は着物(長着)と帯、袴や足袋などの要素を持った日本の伝統的な衣装ですが、映像作品や創作においては、キャラクターの衣装やファッションとして、和装をベースにアレンジしたコーディネートもよく見られます。
イラストレーター 神威なつきさんの著書「レトロモダンな和装の女の子 キャラクターデザインブック」では、和服の要素に「ファンタジー」や「花」などのテーマをかけあわせ、キャラクターの衣装として成立させるアイデアを多数収録。組み合わせたモチーフと合わせて、衣装を着たキャラクターの作例を掲載しています。衣装デザインのアイデア帳として、イラスト集としても楽しめる一冊です。
本記事では序章「レトロモダンな和装の基本」より、本書で伝える「和装」の例と、「レトロモダン」の定義に関する記述を抜粋して紹介します。
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和装の種類
その時代ごとに和装の種類は多様化し、変化しています。季節や着用シーンなどが決まっているもの、同じ着物の種類でも形が違うものがあります。
振袖(ふりそで)
袖丈を長く仕立てた上に身頃と袖を縫い付けない着物で、華やかな柄と「振り」がある長い袖が特徴。
振袖には「大振袖」「中振袖」「小振袖」の3種類があり、それぞれ袖丈の長さが異なる。袖丈の長いものほど格が高い。成人式、結婚式で着用される機会が多い。
十二単(じゅうにひとえ)
平安時代後期に成立した公家女子の正装。袿(うちき)を五枚重ねて着るので五衣(いつつぎぬ)とも呼ばれる。古くは十数枚重ねたこともあったが、十二世紀末ごろから、五枚が正規となった。
水干(すいかん)
男子の平安装束。女子用は白拍子(しらびょうし)。古くは下級官人の公服だったが、絹織物で製して公家や上級武家の私服となり、また少年の式服として用いられた。
巫女(みこ)
神道において巫女が身につける衣装。伝統的な巫女装束は白い小袖に緋袴(ひばかま)を用いることが多い。男女問わずに神社の作業服であり、この姿で祭典奉仕することはない。
白無垢(しろむく)
掛下や打掛をはじめ、帯や小物まですべてを白で統一した着物。頭には綿帽子か角隠しを合わせる。挙式で着ることが多い。無垢は汚れのない「純真」を指す。
レトロモダンの定義
和装をベースにレトロ要素とモダン要素を組み合わせたものが「レトロモダンな和装」です。和装とレトロモダンな和装を見比べ、アレンジポイントを捉えましょう。
巫女ベース→レトロモダンの変化
ベース
レトロモダン
袖×柄
水干のように袖丈を長くし、露を追加してレトロな要素を表現。さらに振袖に使われる柄を取り入れることで華やかさが出る。
袴×ミニスカート
袴の丈を短くし、笹ひだの幅を丈に合わせて調整する。ミニスカートのように見せ、モダンなスタイルにしたデザイン。
振袖ベース→レトロモダンの変化
ベース
レトロモダン
マント
レトロ要素としてマントのような羽織を追加。花柄を加えて現代風にアレンジしている。花モチーフの留め具で華やかさも加えている。
和装柄
柄に花の模様や水玉模様、ボーダー、市松模様を組み合わせることでレトロとモダンの両方の要素を組みこんでいる。
スカート/パンプス
袴の形を整えながら、スカート風にデザインし、裾にフリルをつけてモダンにアレンジ。パンプスにしたところも現代風に見せるポイント。