人物を被写体として撮影した「ポートレート」は、取材記事や広告など多くの案件で必要とされる頻度の高い写真素材ですが、スケジュールやロケーションによっては、撮影のために十分な時間やスペースが取れないこともあります。そうした場合に、現場のフォトグラファーはどのように対応しているのでしょうか。
コマーシャル・フォト2021年1月号の特集「撮影時間は10分間!ポートレイト撮影術」では、時間と場所を限定したシチュエーションで、フォトグラファーが取った対応策を紹介しています。
本記事では、HIRO KIMURAさんの対応例を抜粋して紹介します。
撮影条件
- 撮影場所は、玄光社の会議室
- 撮影時間は10分間
- 被写体は、コマーシャル・フォト編集長
妖艶さとクリエイティブがポイント。骨格も美しく見せるライティングにしました
美しく撮ることが大前提ですが、編集長のイメージが“妖艶さとクリエイティブ”だったので、そこをきちんとおさえることもポイントでした。どのポートレイトでも、被写体に出会った瞬間に感じたことを大切にしています。その人の骨格を的確に読んで一番綺麗なライトを作った上に、その人に合った演出を加える。だからあえて会議室に入るまで編集長を見ないようにしていました。撮っているうちに横顔や目を閉じた時の表情の美しさを発見し、絞っていきました。(HIRO KIMURA )
使用機材
- カメラ :キヤノンEOS 5D Mark IV
- レンズ :キヤノン EF85mm F1.2L ll USM
- 照明機材 :EPSON LCDプロジェクターEB-1720
ライティング
プロジェクターとLEDのミニライトと組み合わせ、光の環を作り出す。
iPhoneに保存したオリジナル画像素材を、被写体に向けてプロジェクターで投影。
「プロジェクターって実はすごくテクニックがいるんです。僕も散々使って、使いこなせるようになったくらいなので。カメラだけでなく照明機材も手持ちがほとんどです。自分が良いと思うスポットへ的確にあてることができるフレキシブルさに加え、被写体とのセッションも大事にしています」。
撮影レポート
プロジェクターの光で闇に浮かびあがる姿はサスペンスフィルムのワンシーンのような空気感。撮影中、編集長側からはカメラの位置が正確にわからない程の暗闇だったそう。そんな様子も感じさせず、自然なポーズチェンジができていたのは、HIROさんのこまめな声がけがあったからこそ。
実は白バックの裏側に黒布もセッティングされていました。その場の状況によって即対応できるよう、常に2パターン準備しておくのだそうです。照明も、今回使用したプロジェクター以外に1灯がセッティングされていました。