ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。
「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第31回のテーマは「魚」です。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 一匹の魚を撮るのか、魚の群れを撮るのかで、視点を変える。
2. 魚の素早い動きは、1/250秒より速いシャッタースピードで捉える。
銀色の魚が、緑の水草の向こう側からちらりと覗いている瞬間を撮影しました。この絵は、水草の配置が良いなと思い、水草がバランス良く収まる構図を先に決めていました。そこへ、うまい具合に魚が入ってくる瞬間を狙いました。思っていたより早く来てくれたので良かったです(笑)。
魚群全体の形を先読みするとよい
私は魚を撮る時、群れなのか単体なのかで視点を変えます。群れの場合は、集合体をひとつの形状として捉え、魚群の形が良いなと感じた瞬間にシャッターを切ります。ただ、魚群は刻一刻と形状を変化させます。時間に余裕がある時は、しばらく変化のパターンを観察して、理想的な配置になりそうな瞬間を先読みすることをおすすめします。一方、魚が単体の場合、一匹だけだと地味になりすぎるケースが多いので、周囲の環境を演出として利用する必要があります。
魚と泡の共演は劇的な一枚も狙える
魚が単体の場合は、泡や海藻など、周辺の環境を演出として利用してみましょう。特に、泡は魚以上に瞬時に形状を変化させますが、連写してみると、劇的な一枚があったりするので、演出の道具としておすすめです。エアポンプの側にいる魚を狙ってみたりすると面白いです。また、魚は動きが素早いので、きっちりと動きを止めて撮影したい方は、シャッタースピードをある程度速くしましょう。私はいつも1/250秒より速いシャッタースピードで撮るようにしています。
遊覧船の地下一階部分に設置された窓から、海の底が見えました。正方形の窓の向こう側にみえる魚群がシンプルで美しいと思ったので、あえて窓枠を入れてシャッターを切りました。ただ、魚自体は銀色で、魚屋さんで見かけるようなイメージでした。そこで、少しだけ非現実的な雰囲気を出したいと思い、OLYMPUS PEN-Fのカラークリエイター機能で青さを強調しました。
金魚屋さんの水槽を覗いた一枚です。エアポンプの向こう側で泳ぐ小ぶりで丸い金魚たちがかわいらしいと思いました。金魚も水槽も地味だったので、変化をつけるために、OLYMPUS PEN-Fのアートフィルターを使うことにしました。雰囲気に合うものを探したところ、「ヴィンテージ」が一番しっくりきたので、それを採用しました。
小さな魚が群れをなして泳いでいるところがキラキラしてきれいだなと思いました。しかし、水槽の中には、魚以外に目立った面白みがありませんでした。そこで、キラキラ感を演出するため、絞りを開放にして、手前を泳いでいる魚を大きくぼかして、魚に光が当たって輝いているような雰囲気を出してみました。