大村祐里子の身近なものの撮り方辞典
第30回

形状の面白さが際立つ「蜘蛛」の不思議な魅力

ふだん写真は撮っているけれども、どうも納得できる写真が撮れない。そういう思いを抱く人は多いのではないでしょうか?写真家の大村祐里子さんは、フォトテクニックデジタルの連載「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」の中で、日常的な風景を独自の視点で見つめて写真作品をつくる方法を教えています。

「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第30回のテーマは「蜘蛛」です。

大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。

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身近なものの撮り方辞典

撮影のポイント

1. リアルに写そうとするよりも、蜘蛛や巣の形状が美しく見えるように切り取る。
2. 濃い色や鮮やかな色の背景で撮ると、蜘蛛の巣をきちんと描写できる。

OLYMPUS PEN-F M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 35mm判換算:50mm相当 f1.8 1/5000秒 ISO200 WB:マニュアル RAW

青空をバックにして蜘蛛を撮影しました。蜘蛛はとても華奢なフォルムなので、背景がごちゃごちゃした場所だと、そのフォルムを活かせません。蜘蛛の存在感を際立たせるためには、背景は極力シンプルな方がよいでしょう。

蜘蛛のフォルムと巣の形状に注目

蜘蛛そのものは気持ちが悪くて嫌い…という声をよく聞きます。そういう私も、蜘蛛自体はそこまで好きではありません。ただ、蜘蛛の巣とセットで捉えると、フォトジェニックさが気持ち悪さを上回る気がするので、不思議と、いつも耐えられます(笑)。やはり蜘蛛の魅力は、訶不思議なフォルムと、独創的な巣の形状だと思います。

撮影をする時は、蜘蛛と巣をリアルに写そうとするのではなく、それらの「形状」が美しく見えるよう切り取った方が面白いです。

濃い色や鮮やかな色を背景に撮影

蜘蛛自体はある程度の大きさがあるので、どのような背景でも写しやすいのですが、蜘蛛の巣は白っぽいので、逆光や、背景が白っぽい場所を選んでしまうと、せっかくの形状が全く際立ちません。蜘蛛の巣まできちんと描写したい場合は、濃い色の背景を選ぶと非常に効果的です。また、背景に変わった色がある場合は、その色で遊んでみるのも一興です。私はいつも背景に鮮やかな色がくるような場所を選んで、蜘蛛の巣を撮影しています。

キヤノンEOS 5D Mark III Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZE f2.8 1/6000秒 ISO400 WB:マニュアル RAW

こちらは完全に蜘蛛の巣だけを撮りたかった一枚です。キラキラした木漏れ日と、それをバックに光る蜘蛛の巣があまりにきれいだと思ったのでシャッターを切りました。全体のバランスだけで構図を決めています。蜘蛛の巣は自然界の中に存在する、非常にデザイン性の高いものだと思います。

キヤノンEOS 5D Mark IV Carl Zeiss Makro-Planar T* 2/50 ZE f2.8 1/100秒 ISO200 WB:マニュアル RAW

紫陽花をバックに蜘蛛と巣を撮影しました。濃い紫色の前に巣をつくる、白い蜘蛛がとても幻想的でした。蜘蛛の巣はこういう濃いめの色を後ろに持ってくると、映えますね。

OLYMPUS PEN-F M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO 35mm判換算:50mm相当 f1.8 1/3200秒 ISO200 WB:マニュアル RAW

廃墟になったビルの窓です。重なりあって棉のようになった白い蜘蛛の巣が、紺色の窓の端でひっそりと光っていてきれいでした。こういった、年季の入った蜘蛛の巣も、とってもフォトジェニックだなと思います。


身近なものの撮り方辞典

著者プロフィール

大村 祐里子


(おおむら・ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。著書「フィルムカメラ・スタートブック」、「身近なものの撮り方辞典100

ウェブサイト:YURIKO OMURA
ブログ:シャッターガール
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