趣味の写真撮影に失敗はつきもの。被写体やシーンをとらえるタイミングはよかったのに、後で写真を見たらきちんと写っていなくてがっくり、という体験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
写真教室の講師もつとめる写真家・上田晃司さんの著書「初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門」では、写真撮影における「失敗」を「自分の思い通りに撮れていないこと」ととらえ、撮影者が最初に思い浮かべたイメージに近づけるためのテクニックを詳細に解説。露出設定からピント、被写界深度、シャッタースピード、焦点距離、画角といった写真撮影の知識や技術を、図解と作例でわかりやすく説明しており、読み込むことで、撮影初心者にありがちな写真表現上の疑問を解決する一冊に仕上がっています。
本記事では、第3章「シャッタースピードの表現」より、夜景ポートレートを撮影する際の基礎テクニックの例をご紹介します。
長時間露光時に被写体にストロボを当てる
高速道路の下で人物撮影をしました。ただ普通に撮影しても面白みがないので、クルマの往来を背景にしています。1.3秒というシャッタースピードですが、ストロボを照射することで、光が人物に当たった一瞬の姿が記録され、長秒でも人物をシャープに撮影できました。
夜景と人物をきれいに撮るテクニックはストロボが鍵
長時間露光にすると動いている被写体はぶれてしまうため、人物を撮影する際に行おうとは思わないでしょう。しかし、少し変わった表現を求めるなら長時間露光で人物撮影もありです。今回の作例のように人物以外をぶらして、不思議な感じにする方法がお薦めです。
でも、なぜ長時間露光で撮影したにもかかわらず作例の人物はぶれていないのでしょうか。1秒より遅いシャッタースピードになると人間は止まっているつもりでも動きがあり、少しぶれてしまいます。
答えはストロボです。ストロボを使うと動いている被写体を止めることができます。この作例では、1.3 秒間シャッターを開いていますが、ストロボを使うことで人物の被写体ぶれを防いでいます。ストロボはただ単に被写体を明るく照らす
だけではなく、「閃光(一瞬にして放たれる強烈な光)」速度が速いという性質があります。
ストロボは一瞬しか光りませんが光った一瞬はシャッタースピードに換算すると、発光量にもよりますが1/40000秒から1/1000秒くらいの速さになります。その結果、ストロボが当たっている瞬間の被写体が記録され、動きが止まるのです。ただし、シャッタースピードが5秒や10秒と長くなっていくとストロボと周囲の明るさとのバランスが崩れ、ストロボ光の方が相対的に暗くなり、ぶれの原因になります。
人物と夜景を一緒に撮る時は、シャッタースピードを夜景の明るさに合わせて設定し、人物はストロボで対応するのがベストです。
撮影のポイント
三脚でぶれを防止
三脚を使い、人物まで約2mの位置にカメラを構えました。周辺の情報も入れるため、24mmのレンズを使っています。
ストロボで照らす
ストロボはカメラのホットシューに付けています。照射角度は レンズの画角に合わせて24mmにしています。
背景にはストロボの光が届かない
人物と背景との距離・20mくらいあります。背景にはストロボ光が届かないので動いている被写体はすべてぶれます。