子どもたちは、彼らにしかない感性で世界を見ています。その想像力と感性は、時として絵や造形などの形で表現され、大人たちの想像を超えた輝きを放つものです。
イラストレーター、デザイナー、美術監督として知られ、二児の父でもあるロマン・トマさんは、二人の愛息が描いた絵に刺激を受けて、自らの持つ技術を使い、彼らが表現した作品の再解釈を試みました。
「親子デザイン工房」は、ロマン・トマさんと二人の息子、竜之介さんと樹さんの手によって生み出されたイラストレーションをまとめた共著です。本書では、11歳の竜之介さんと9歳の樹さんが発想し、形にしたイラストを、ロマン・トマさんがプロのクリエイターとしてより完成したイメージへと”翻訳”するまでの流れを、イラストレーションとコメントの両面から楽しむことができます。
本記事では、いつもとは違った発想で樹さんがデザインした「乗り物」に、これまで登場したキャラクターをクロスオーバーさせる形で仕上げたイラストを紹介します。
サイバーチェイス
トマ
樹のこの絵には驚きました。彼が車を描くとは思わなかったからです。まさに、このプロジェクトで最もエキサイティングなことのひとつです。想像もしないものが出てくるのですから。もとのアイデアを最大限に生かすためには、それに順応し、常に創造的でいなければなりません。車だけを描くのではちょっと寂しいので、お気に入りのキャラクター、「ジャスティス」と「ノア」を登場させることにしました。車を運転するのは、そう、樹が以前描いたサイボーグ「オフラインマックス」です。車の角型をなるべくキープするようにしました。SF映画『バック・トゥーザ・フューチャー』のデロリアンを彷彿とさせる、レトロな外観です。
樹
いつものキャラクターじゃなくて、車を描こうと思いました。よく散歩にいく、東京のメインエリアのひとつ、新宿で見たリムジンからインスピレーションを得ました。さらに、列車の要素と車の要素を混ぜてみました。ぼくの絵はとてもシンプルですが、お父さんはもっとリアルなものにしてくれました。車からは、レーザー・サーベルのような緑のジェット噴射が出ていてかっこいいです。だけど一番クールなのは、ぼくが最初に描いたキャラのサイボーグをはじめ、たくさんのキャラクターを共演させてくれたことです。
<玄光社の本>