子どもたちは、彼らにしかない感性で世界を見ています。その想像力と感性は、時として絵や造形などの形で表現され、大人たちの想像を超えた輝きを放つものです。
イラストレーター、デザイナー、美術監督として知られ、二児の父でもあるロマン・トマさんは、二人の愛息が描いた絵に刺激を受けて、自らの持つ技術を使い、彼らが表現した作品の再解釈を試みました。
「親子デザイン工房」は、ロマン・トマさんと二人の息子、竜之介さんと樹さんの手によって生み出されたイラストレーションをまとめた共著です。本書では、11歳の竜之介さんと9歳の樹さんが発想し、形にしたイラストを、ロマン・トマさんがプロのクリエイターとしてより完成したイメージへと”翻訳”するまでの流れを、イラストレーションとコメントの両面から楽しむことができます。
本記事では、竜之介さんがデザインした正義のヒロイン「ジャスティス」をご紹介します。
ジャスティス
トマ
この絵は私の提案でスタートしました。「女の子のキャラクターを描いてみたら?」と竜之介に聞いてみたのです。さらに明確なアイデアを与えようと、ハッカー、または未来の世界に住んでいる子で、テクノロジーに非常に詳しいという設定はどうか、といってみました。そうしてできあがった竜之介の絵は、期待を裏切りませんでした! ボーイッシュなデザインとヘアスタイルは、私が来日するきっかけとなった日仏合作アニメーション作品『オーバン・スターレーサーズ』のモリーの面影があります。シンプルな色使い、特にピンク色の髪を引き立てる白を多用しているところが非常に効果的です。このイラストを見ていると、90年代の日本アニメの黄金時代を思い出します。
竜之介
スマートフォン、コンピュータ、テレビゲーム機から発想を得ました。洗練されていてすっきりとしたデザインの剣、キーボードのような青いキー、正義のヒロインが着ている服の赤い模様は、すべてこうした電子機器をモチーフにしています。お父さんはサーファーのポーズにして、キャラクターをよりダイナミックにしました。地面に落ちた影がギザギザになっているところがすごく好きです。スピード感がよく出ています。
<玄光社の本>