本連載は、鮮やかな色彩と独自に作り込まれた世界観で人気のイラストレーター・藤ちょこさんがキャラクター造形や描き方を解説したメイキング・ブック『美しい幻想世界とキャラクターを描く』から、アジアンファンタジー世界を描いた作品の制作プロセスを追いながら、藤ちょこさんのクリエイティビティの秘密をご紹介しています。
第8回は、背景の塗りで作品全体に遠近感を与えるテクニックを紹介します。
背景① 下描きを薄く表示させながらペン入れをしていく
❶改めて下描きしペン入れをする
背景部分のラフはざっくりとしか描いていないので、そのままペン入れせずにパースガイド線に沿って改めて詳細な下描きをします。
❷線のメリハリや立体感を出す
立体感を把握しやすいように、建物同士が重なり合うことによってできる影はこの段階で描き込んでいきます。
紺色の棒人間を置いて、建物の大きさの参考に。 | 使用ツールはキャラ線画と同じく[鉛筆5 混合]。ここでもペンの大きさを適宜変え、線に強弱、メリハリを付けています。 |
背景② 光の向きに注意しながら建物を塗っていく
❶建物を塗り影を描く
建物の線画レイヤーの下に、合成モード[通常]のレイヤーを新規作成して建物の領域を塗りつぶし、穴の底に向かって暗くなるように灰がかった紫色で影を描きます。
窓の明かりや提灯、通路から溢れ出る光など、複数ある光源に注意しながら描いていきます。 |
❷ベースカラーを建物に乗せる
合成モード[乗算]のレイヤーを新規作成し、一度赤茶色で塗りつぶしてから、建物それぞれに色を乗せていきます。ベースカラーを共有することで色に統一感が出ます。
左端に強めの光源がある設定にし、穴外周の建物には左側に強く光を当てて立体感を演出します。 |
❸固有色を塗りレイヤーを統合する
どんどん建物の固有色を塗っていき、ある程度全体像が見えてきたら、線画レイヤーと塗りレイヤーを統合します。
❹建物の遠近感を強調する
合成モード[オーバーレイ]のレイヤーを新規作成して背景レイヤーにクリッピングし、建物の上部はオレンジ色、下部は紺色で塗りつぶします。
そのままだと色味が強すぎるので、レイヤーの不透明度は31%に下げました。 | ||
色彩遠近法(※)により、建物の上部は手前に、下部は奥に見えます。 |
※ 色彩遠近法
赤・オレンジ・ピンクなど暖色系の色は手前に、逆に青・緑など寒色系の色は奥にあるように見えます。また、同じ色相でも彩度が高いほど手前に、彩度が低いと奥にあるように見えます。この法則を利用した技法が色彩遠近法です。
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