本連載は、鮮やかな色彩と独自に作り込まれた世界観で人気のイラストレーター・藤ちょこさんがキャラクター造形や描き方を解説したメイキング・ブック『美しい幻想世界とキャラクターを描く』から、アジアンファンタジー世界を描いた作品の制作プロセスを追いながら、藤ちょこさんのクリエイティビティの秘密をご紹介しています。
第6回は、色の塗り方で遠近感や立体感を演出する技法を紹介します。
キャラ塗り③ レイヤーをあまり分けずに服を塗っていく
❶影を先に描いて立体感を把握する
服は、固有色を入れる前にまず影のみを描き入れます。上から色を重ねた際に濁った印象にならないよう、
無彩色(グレー)ではなく灰がかった紫色を使用します。
藤ちょこ’s Comment 以前は細かいパーツもベース色で塗り分けて、一つひとつ順番に仕上げいく、という塗り方をしていましたが、それだと全体の立体感の把握がしづらいため、このような変則的な塗り方になりました。 |
胸元は、影の一部にピンク色を混ぜています。色彩遠近法(※1)により、ピンク色を混ぜた部分が前へせり出して見えるので、胸の膨らみを強調させることができます。
❷ショートパンツの固有色を塗る
合成モード[乗算]のレイヤーを新規作成し、ショートパンツの固有色を塗ります。合成モードが[乗算]なので、さきほど描いた影が薄く透けています。
その影を参考に、シワや影を塗り込んでいきます。また、服に包まれた体のラインを意識して描くと、より魅力的な印象になります。 |
部分的に青や赤紫などの彩度の高い差し色やハイライトを入れ、密度を高めていきます。
POINT─────
肌を透けさせてドキッとさせる
肌の色を[スポイト]ツールで取り、[エアブラシ]でショートパンツの太ももに接している部分に薄く乗せます。すると肌と服の境界がやわらかくなって色がなじみ、ショートパンツが薄く透けているように見せることができます。
❸他のパーツにも固有色を入れる
合成モード[乗算]のレイヤーを新規作成し、脇下の布地、アームカバー、よだれかけなど、他のパーツにも固有色を入れます。細かく塗るのは、後回しです。なお、レイヤーウィンドウで[下のレイヤーでクリッピング]をしておくと、ベースである「レイヤー2」の描画領域からはみ出さずに塗ることができます。
❹光に注意してスカートを塗る
シワの影や提灯の光に注意しながらスカートを塗っていきます。スカートの内側は色彩遠近法(※)を用いて、暗めの紫色を重ねて彩度を抑えて奥にあるように見せています。
(左)スカートのフチには黄色の線を入れて立体感を与えました。金糸の刺繍のような雰囲気を出すためにコントラストを強めに。
※ 色彩遠近法
赤・オレンジ・ピンクなど暖色系の色は手前に、逆に青・緑など寒色系の色は奥にあるように見えます。また、同じ色相でも彩度が高いほど手前に、彩度が低いと奥にあるように見えます。この法則を利用した技法が色彩遠近法です。
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